りっく

家族はつらいよのりっくのレビュー・感想・評価

家族はつらいよ(2016年製作の映画)
4.1
熟年離婚をテーマに妻がハンを押した離婚届をめぐる家族の物語は、家族を描き続けてきた松竹の名監督・山田洋次が、むしろ自らが映画を撮る際もしがらみとなっていたであろう家族を解体しようとするベクトルへ向かっているのが面白い。各シークエンス尻のギャグの数々は全く笑えないものの、それを山田洋次は面白いと思って入れ込んでいる事実も含め、ブラックコメディとして必見の一作。

三世代の家族が同居するひとつの家で、祖父母は二階で離婚届を破り捨て一件落着、西村雅彦と夏川結衣演じる父母たちは子供も交え喧嘩が絶えない一階、そして妻夫木と蒼井優演じる次世代の夫婦は家を出るという構図もよい。

妻夫木がピアノの旋律を調整するのを生業にしているという設定は安直だし、彼の台詞だけ家族というものを非常に説明的に語るので浮いてはいるものの、そういった若い世代に旧世代の問題を背負い込ませず、家族とはかくあるべきだという理想を押し付けない、むしろ自由さや柔軟さを託している点が山田洋次のフィルモグラフィーとして見逃せない点なのではないか。
りっく

りっく