都部

セッションの都部のレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
3.9
ジャズ音楽をあくまでの軸として、映画本編で語られるのは音楽に取り憑かれた孤独なる二つの魂の偏執的な狂気と狂気の衝突である。

音楽の天才児と指導者の典型的な作劇から血生臭く脱却した脚本は言うまでもなく無二で優れており、次第にその壮絶さを極めていく人間ドラマを迫力充分とばかり掻き立てる斬れ味の良い演出が作品を形作っている。

マイルズテラーとJ.Kシモンズの演技合戦とも言える本作、特にシモンズ演じるフレッチャーの強烈なキャラクター性は個性的かつ魅力的で、彼の激を飛ばす姿は嫌悪感を催すほどに力強いものだ。しかしそれ頼りの映画であるかと言われるとそれは否で、自分本位で求道的な姿勢を貫く/貫けてしまう個人の孤独を尊大さを踏まえて語る筆致が作品に至極の味わいを与えているとも取れる。

ラスト15分の作品としての最高潮を迎える音楽シークエンスの、ハイボルテージなカット割によるここでのテンポ感の見せ方も見事だが、そこに至るまでの"教育"の二文字からは程遠い鞭打ちの日々が狂気の伝染を的確に盛り上げ、体感としてのカタルシスを底上げしているのも見事だった。
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