Eyesworth

セッションのEyesworthのレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
4.5
音楽大学でジャズドラムに熱心に励む青年アンドリュー・ニーマンが鬼教官テレンス・フレッチャーの指導によって熱心を通り越して狂気的なジャズドラマーに変貌していく話。

ジャズといえば、作中にも名前が度々登場する「サッチモ」ことルイ・アームストロングや「バード」ことチャーリー・パーカーが有名だが、そんな一握りの天才達はセンスは当然、想像し難い練習量と傷を体に刻み込み、激痛を乗り越えた先でセッションするクレイジーさを持っていた。
ニーマンにもその天才の片鱗が見えるのだが、その才能を発掘したとも言えるし、潰したとも言えるのがフレッチャーだ。彼の常軌を逸した罵詈雑言スパルタ教育に伴走できるタフさをもつ生徒はまずいないし、こんな男に一生ついていきます!とは死んでも言えない。だが、ニーマンのような一握りのジャズ狂は彼と共に喜んで地獄まで片足を踏み入れるのだろう。なんせ交通事故にあって血だらけになりながらも会場へと走りヘトヘトでスティックを叩き続ける男だ。性格もフレッチャーに負けず劣らずねじ曲がってるし、彼との相性は抜群かもしれない。
それであのラストシーンだ。お互いが足を引っ張り合う局面からお互いを信用し二人の世界に突入した数分間。あの場にいた聴衆があれで感動したとは到底思えないが、すごいものを見たという衝撃は一生残るだろう。記録には残らずとも人々の記憶の中で生き続ける場面。この映画自体もそんな感じ。

ただ、やはりフレッチャーの教育は物を投げつけたり、ビンタしたり、ミスった奏者を晒し首のように糾弾するし、現代じゃなくても行き過ぎてると思う。それでこの映画が嫌いな人がいるのもよくわかる。でも、他の方も似たようなことを書いていたが、毒にも薬にもならない映画は一番良くない。必要な毒を摂取したと思えば、後の猛毒にも対抗しうる抗体が体にできて悪くないだろう。私はこのセッションという新鮮なフグ料理を美味しくいただきました。

蛇足ですが、、、
・やっぱドラムってカッケー!!!!
・フレッチャーと『フルメタル・ジャケット』のハートマン軍曹の世紀の罵り合い対決が見たい!!
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