ヴェルヴェっちょ

セッションのヴェルヴェっちょのレビュー・感想・評価

セッション(2014年製作の映画)
4.3
自分にとって原体験となる映画は、時間を忘れてのめりこめる作品。
まさにそういう作品でした。

偉大なジャズ・ドラマーになるという野心を抱いて、全米屈指の名門校シェイファー音楽院に入学した19歳のアンドリュー・ニーマン(マイルズ・テラー)は、何とかしてフレッチャー教授(J・K・シモンズ)の目に留まりたいと考えていた。 教授が指揮する“スタジオ・バンド”に所属すれば、成功は約束されたも同然だからだ。
ある日、一人で練習するニーマンの前にフレッチャーが現れるが、ほんの数秒聴いただけで出て行ってしまう。 数日後、ニーマンのバンドのレッスンに顔を出したフレッチャーは、メンバー全員の音をチェックすると主奏者のライアン(オースティン・ストウェル)を差し置いて、ニーマンにだけ自分のバンドに移籍するよう命じる…。
そして異様なまでの緊張感に包まれた教室でレッスンが始まった。ニーマンは、ビンタでテンポを矯正され、悪魔のごとき形相で罵られる。
泣いて帰ったニーマンだが、翌日からその悔しさをバネに肉が裂け血の噴き出す手に絆創膏を貼ってひたすらドラムを叩き続けるのだった…。

マイルズ・テラーのドラムテクニックといい、J・K・シモンズの鬼指導といい、演技の域を超えてる。
スパルタからパワハラ、そして狂気へ。
そう、熱血とかそういうレベルからは大きく逸脱している世界。
こんなシゴキをしたら問題になるに決まっているが、そこに浸れるのも映画の醍醐味。

ニーマン、凄いよ!!!私だったら5分で音を上げているところを、異次元まで連れて行ってくれる。 フレッチャー教授とニーマンの関係は、師弟を離れて憎しみ合いという次元にまで達している。

そして皮肉にも、不和になればなるほど音楽は美しさを増していくことになる。 そのあたりは丸谷才一の『持ち重りする薔薇の花』を思い出しました。