義民伝兵衛と蝉時雨

アバター:ウェイ・オブ・ウォーターの義民伝兵衛と蝉時雨のレビュー・感想・評価

4.3
物質主義、拝金主義、乱獲、略奪、戦争、人類の底知れぬ我欲が招いた地球の環境破壊。数十億年前、かつて地球が誇った純粋な自然の豊かさと、その後それを貪り壊し汚し続けてきた人類の愚かな歴史。今となっては地球の自然は健康を損ない末期的である。人類は地球の資源に底が見え始めると、その矛先は必然的に再び豊富な資源を求めて愚かにも宇宙へと向かう。スカイピープルは間違えなく人類の底知れぬ我欲が招くであろう未来の問題であり、これまでの歴史が語るように人類はどこまで行ってもこの我欲を自制し切ることは出来ずに同じ過ちを繰り返し続けるだろう。

前作と変わらぬ自然崇拝的な精神性やアミニズム的な精神性が、そんな人類の我欲に対する警鐘を豪快に打ち鳴らす。その豊かな自然観が、かつてあった地球の自然への郷愁を誘い、涙を誘う。正しく失われた地球の自然への鎮魂歌。自然から必要以上の搾取を止め、宗教に変わって世の中を支配している科学に形成された、人間の想像力や創造性を矮小化させる科学的固定概念を拭い去り、かつての様に、自然を敬い、自然と繋がり、必要最低限を享受し、それだけで満足することの出来る豊かで屈強な精神を養い、質素ながらも内外自然に溢れた豊かな生活を取り戻すこと。今作もそこに思いを馳せる。自然回帰。自然調和。しかし本作はそれを前作同様に徹底的に自然とは対極にある最先端のテクノロジーによって矛盾を孕みつつ語る。しかしそんな矛盾さえもどうでもよくなるほどのエネルギーに満ちたキャメロン監督のメッセージに前作同様に感服する他なかった。

自然調和なメッセージとは裏腹な、この最先端のテクノロジーが魅せる神秘的な世界観や幻想的な映像美が前作同様に圧巻。3D映画としても前作同様に文句無しの完成度だと思った。普遍的なメッセージを腹に孕んだ究極のエンタメ。良くも悪くも最大限に商業している。

今作はそれに加えて、人間は勿論、どの様な生命にとっても必要不可欠である家族や家庭内の愛情の重要さが描かれている。生命が成長する過程で、親から子への愛情の必要不可欠さは勿論の事、子から親への愛情の尊さも存分に伝わってくる内容だった。

圧倒的なエンタメ性に、普遍的なメッセージ。商業性と精神性のこの絶妙な融合。今作もキャメロン監督の抜かり無い手腕に感服した。