よーだ育休中

アバター:ウェイ・オブ・ウォーターのよーだ育休中のレビュー・感想・評価

4.0
見事スカイ・ピープルを撃退し、エイワの力で人間からナヴィへと生まれ変わったJake Sully(Sam Worthington)は、森に暮らすオマティカヤ族の長として、四人の子供たちの父親として、幸せな日々を過ごしていた。そんな幸せを打ち壊すかの様に、突如パンドラの夜空に凶星が輝く。美しい星を蹂躙せんと再びスカイ・ピープルが飛来する。


◆前作を凌ぐハイクオリティな映像

圧倒的な映像美と没入感で、当時の世界興行収入記録を塗り替えた大ヒットSF作品『アバター』から13年。自然豊かな衛星パンドラが前作を上回る美しさで描かれていました。映像の美しさと動きの滑らかさは前作のそれを遥かに凌駕する圧倒的なクオリティの高さ。その映像は4KHDR仕様の自然ドキュメンタリー番組を観ているかの如く、架空の衛星とは思えないほどにリアルでナチュラルなものでした。

生命を育む大地をテーマに据えた前作から、今作は生命の根源たる海へシフト。タイトルの『The Way of Water』が示す通り、パンドラに暮らすナヴィと海との関わりが強く描かれていました。イクランと共に空を駆け、ダイアホースと共に森を走るオマティカヤ族とは全く異なる進化を遂げた《海の民》の集落へJake一家は身を寄せることとなります。同じナヴィであっても、海での生活に順応した身体的特徴、文化、風習を持つメトカイナ族。そして彼らと生活を共にするイル、スキムウィング、トゥルクンをはじめとする多種多様な海棲生物たちに目を奪われます。スクリーンに広がる未知なるパンドラの海の美しさ、荒々しさ、そして神秘を前に、好奇心旺盛なJakeの子供たちと同様に心を奪われ、息を呑み、驚嘆することとなりました。


◆演出は見事であるが、脚本は並。

今作では希少鉱物では無く、滅びゆく地球から移住するために衛星丸ごと手中に収めようとスカイ・ピープルがやってきます。営利目的では無いが故に、ラピュタの飛行石の様なアンオブタニウム採掘に伴う非人道的な行為(つまり知的生命体であるナヴィの殺戮)による企業側のレピュテーションリスクなどを一切考慮せず攻撃を仕掛けてきます。前作でナヴィを率いて勝利へと導いたJake Sullyは人類の敵、裏切り者として命を狙われていました。

守るべき家族が出来たことで、Jakeは前作の様に無理な全面戦争に打って出ることはしません。〝何かを得る〟ための戦いではなく、〝大切なものを守る〟ための戦いを選択するのです。勝つことでは無く負けないことが至上命題であるため、命懸けで勝ち取った森での暮らしを捨てることも辞さないJake。前作から続投するキャラクターの変化は一つ見所でありましたが、プロットとしては至極ありきたりなものでした。

J.Cameron監督おなじみの『主要キャストの退場劇』に心揺さぶられる部分はありましたし、新たな強敵を据えるのではなく因縁の宿敵がパワーアップしてカムバックするというヒール側の設定も良かった。さらには、そんなヒールたちが前作のJakeの様にナヴィの通過儀礼に挑む様子。『右腕には右腕を』やられた分をきっちりやり返すトゥルクンのパヤカンなど、細かい演出に唸る部分は勿論ありましたし、同監督の大ヒット作品『タイタニック』を彷彿とさせる様な息を呑むスペクタクルなど、演出の妙として見応えのあるシーンは勿論ありました。


◆脚本は続編に期待

13年の時を経て新章が制作されることとなった『アバター』は、どうやら全5作品からなるシリーズとして構成が練られている様子。今作から新たに魅力的なキャラクターたちが作品に加わり、後続作品にて詳らかにされるであろう謎も投げかけられていました。

JakeとNeytiri(Zoe Saldana)との間に生まれた子供たち(Lo'akとTuktirey)は今後の成長が大いに楽しみですし、彼らに養子として迎え入れられたKiri(Sigourney Weaver)の謎も非常に気になります。(彼女に関しては、イエス・キリストを彷彿とさせるアナキン・スカイウォーカーのように『出生の秘密』よりも『物語に与える影響』にこそ注視すべきかもしれないですが。)

宿敵の血を引きながらもナヴィに憧れる少年Spider(Jack Champion)の動向や、今後もナヴィの敵として立ちはだかる事になるであろうQuaritch(Stephen Lang)にも目が離せません。敵か味方か、微妙な立場のキャラクターを生み出して物語に絡めているのは見事でした。今作で紹介された彼らが、今後どのように物語を動かしていくのかという点は非常に楽しみです。

てっきりシリーズを通してJakeらが複数の部族の元を転々とする『パンドラ周遊ツアー』が企画されているのかと思いきや、どうやらそうではなく《海の民》として居を構える様です。続編でも今作のように『パンドラの新たな一面』を驚きの映像と共に提供してくれるのかと思っていたのですが、そうでは無い様子(確かに〝それ〟をやってしまうと後続作品のストーリーが二番煎じになり、どんどんつまらなくなる)。今作では映像こそ素晴らしく、新鮮な驚きがあったために、多少プロットが陳腐なものであっても目を瞑ることができました。今後、おそらくスカイ・ピープルとの全面戦争が控えていることでしょうが、このハードルを如何にして乗り越えていくのか期待したい。続編を控えたシリーズ内におけるイントロ的立ち位置の作品だと思えば、プロットに面白みがなかったのも詮無きことと納得しておきます。

今作は『ターミネーター』シリーズの様に版権の問題や製作会社が倒産などによってシリーズ企画そのものが頓挫してしまったり、制作が打ち切られてしまったりする事の無い様にお願いしたい。切実に。


*雑記*
最寄りの最終上映日(最終上映回)になんとか駆け込み鑑賞できました。無事にパンフ(という名のVisual Dictionary)もゲット。次回作以降は大スクリーンの4dxでアバ体験したい。