エグいなどという言葉では足りないほどの、あまりに残酷な伏線回収の数々に思わず唸ってしまった。
24時間後の同じ場所にしかいけないタイム・トラベル。
しかも、未来に滞在できるのは15分のみ。
という悪条件のなか、チーム長とウンヨンの二人が未来に飛ぶところから物語は動き出す。
わずか一日後。なのに、施設は壊滅的に破壊され、廃墟のようになっている。
そればかりか、二人の命を狙ってくる正体不明の人間までもがいる。
なぜ、こんなことになったのか。どうすれば未来を変えられるのか。
チーム長は未来から持ち帰った防犯カメラの映像を手掛かりに、解決策を探ろうとする。
が、映像はウイルスに感染し、ほとんどが見られない。
どうにかしたくても、対処できる唯一の人物ウンヨンは昏睡状態。
さらに、なんとか見られたわずかな映像には、スタッフが死んでいる姿が映っているという状況。
定番のタイム・トラベルものなら、ここから行動を起こし未来を変えていくとなるところだが、この映画は違う。
いくらさまざまな行動を取っても、結局はカメラの映像通りの死を迎えてしまうのだ。
爆破を阻止しようとしても、逃げようとしても、最後には必ず確定した死が待っている。
この怖さと、死の瞬間だけが映った映像にたどり着いてしまう過程に、ぞぐぞくとさせられた。
タイムマシンがまったく万能でないところや、研究者が人命よりも施設を守りたがるところなど、細かな設定がわりとリアルなので、変にぶっ飛んだ話になっていないのもいい。
密室に閉じ込められた7人が繰り広げる政治劇になっているのも、その一面だろう。
タイムマシンの移動も、まるでロケットの発射シーンのようでよかった。
ありとあらゆる伏線は、すべてきっちりときれいに回収される。
でも、回収された結果は、心地良いものではなく、残酷そのものだ。
観ていて「プリデスティネーション」をちょっと思い浮かべたのは、あながち的外れではないと思う。
計算され尽くした、いいSF映画だった。