デニロ

この国の空のデニロのレビュー・感想・評価

この国の空(2015年製作の映画)
4.0
観るのならテアトル新宿と決めていた。時間を作るのに手間取って遅くなってしまった。

本作ではラストで下田逸郎は使えないだろう。どうするのかと思っていたら、二階堂ふみの振り返った顔のクローズアップに1行のト書き。ゆっくりズームしていき暗溶し、二階堂ふみが一篇の詩を朗読する。茨木のり子「私が一番きれいだったとき」。20年前のケン・ローチ『大地と自由』のインターナショナルフルコーラスを思い出してしまった。

『柳生一族の陰謀』で萬屋錦之介が時代掛かった台詞回しで芝居を始めると、監督の深作欣二は演出している他の役者の芝居と合わないので何とか修正を依頼したそうだが、萬屋錦之介は最後まで押し通しあの大ドンデン返し「これは夢だ、夢だ、夢だ~、夢でござ~る!」に繋がったんだそうだ。役者には役者の持って行き方があるのだろう。冒頭から続く二階堂ふみの台詞回しも、当初は原節子か・・・と思わないわけではなかったがその仕草、佇まいと共に淀みなく徹底されていて美しかった。が、その佇まいや話し方、仕草が崩れるときが来る。「今すぐ食べて」と、19歳の処女がおんなの性を顕す。

台詞回しや仕草は、荒井晴彦や二階堂ふみの発言に拠れば演出したわけではなく、二階堂ふみが作りこんできたようだ。凄いな。

このあとこの国がどうなっていったのかわたしたちは知っている。国民は戦争という日常がなくなり、戦争という名の下に許容していた損失はそのままに非日常に放り出されてしまった。それから・・・・人が人の上を歩く世界を作り出して、ずっと人は戦っている。二階堂ふみの眼差しは未来の私たちを挑発しているようだ。

デヴューから見ている工藤夕貴、富田靖子が大きくなって嬉しかった。
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