これぞ、「映画」の始まり。
本作を起源に紡がれた130年の歴史の重さを加味すると、どう評価していいのか分かりません。
映像としては、門が開いて沢山の人が出てきて閉まるだけと、大層な内容ではありません。ネタバレも何もないのです。
超短尺かつ劇伴もなく、映像のクオリティとしても決して優れているとは言えないでしょう。
ですが、現代の視点から見てしまうと、ルイス・リュミエールが開いた「映画」という門から、沢山の偉大な映画監督たちが出てきて数々の傑作を世に送り出していったとも解釈でき、これだけでもかなり胸が熱くなってしまいます。(ドンピシャとまではいかずとも、恐らくリュミエールも続く歴史を夢想して、この門が開く様子をシネマトグラフに収めていたように思います。皆さんはどう考えますでしょうか?是非ご意見お聞かせ下さい!)
また、沢山の人が出てきて閉まるだけとも書きましたが、中には犬を連れている人もいて、犬が他の人の進行を妨げているのも見て取れ、細かく見ていくと実は「映画」の起源であると同時に、「映画」の本質さえも提示しているように感じられました。
「映画」が描けることは幅広く、人の動きだけでなく、人の表情、ひいては人の感情さえも画面に収めることができます。
誰もが同じ画面を観て、感じて考えて、自分のものにしていく作業ができる。これは「映画」の特権かつ、ある種本質であるように感じます。
絵画以上に、小説以上に、圧倒的な情報量によって伝えられる思いは、1人1人違う感想をもって然るべきですし、異なる意見が出ることで、より作品は作られた意義性を深めていくと思っています。
そういった意味で、犬の描写が挿し込まれることによって広がる意義性の深まりは、目を見張るものがあるように感じました。
他にも、画面を横切る子ども?や道を教える労働者等、細部まで拘り抜かれていて、たった46秒ながら並々ならない熱意、熱量が垣間見えました。
物語と言うにはあまりに短いですが、門が開いて閉じるまでと一応のまとまりもあるため、そこも一定数評価できるのかなといった具合です。
総じて、現代の視点から見ることで、より大きな意義性を感じられる1本でした!