T太郎

スリーピング・ボイス 沈黙の叫びのT太郎のレビュー・感想・評価

3.6
882
スペイン映画だ。
フランコ政権下で過酷な弾圧を受けた人々を描いた物語である。

内戦終結間もない1940年。
フランコ新政権は旧人民戦線軍側の人々を片っ端から刑務所に収監していた。

裁判とも言えない裁判を行い、いとも簡単に死刑を宣告する。

弁護人もいるのだが、全く弁護はしない。
その態度や発言は検察側と何ら変わらないのである。

そして、死刑執行だ。
一列に並べられた受刑者たちは目隠しをされる事もなく、一斉に銃殺される。
更に一人ずつとどめの一発を撃ち込まれていくのだ。

他の囚人たちはその音を聞いて、
「今日は12人か」
となるのである。

先ほど人民戦線軍側と書いたが、物語内では共産党員という部分が強調されている。

迫害を受けるのは共産党員で、迫害する側がキリスト教という図式が強調されているのだ。

教会のシスターなど非常に恐ろしい存在として描かれている。
信徒以外の者に対しては、あれほどまでに残酷になれるのか!

物語の主人公は二人の姉妹だ。

姉は刑務所に収監されている。
つまり共産党員だ。
獄中ながら身ごもっている。
夫は地下組織のリーダーで当局から追われている身だ。

妹は敬虔なキリスト教徒だが、共産党員に対して敵意はない。
姉を心配しており、無事出所できるよう奔走する。

そんな二人を巡る物語である。

ジャケットの説明文かなんか忘れたけど、まるで女性映画であるかのような文言があった。
“全ての女性のために・・・”
みたいな。

しかし、全然そんな内容ではない。
フランコ政権の非道ぶりと迫害を受けた共産党員たちの苦難を描いた物語なのだ。

女性男性は関係ないのである。

スペインの内戦についてザックリは知っていた。
フランコの反乱軍側が勝った事とか。
フランコとヒトラーが仲良しだったとか。
すごく大変な戦いだったとか。
だから、第二次世界大戦に参戦する余裕がなかったとか。

しかし、この作品を観るに当たり私は考えた。

内戦の事を知らなければ、物語の意味が理解できないかも。
私は内戦の事を何も知らない。
このままではいけない。
予習しなければ!

私は直ちにウィキペディアを紐解いたのである。

なるほど、ファシズム対共産主義・社会主義の戦いだったのか。
ナチスとソ連の代理戦争だったのか。

だから、共産党員があれほど弾圧されたのか。

以上!

・・なんか、宗教的、政治的なあれこれを感じる作品なので、個人的な感想は差し控えたい。

見応えのある作品である事は間違いない。
T太郎

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