MikiMickle

ネスト/トガリネズミの巣穴のMikiMickleのレビュー・感想・評価

3.6
製作はアレックス・デ・ラ・イグレシア監督

アパートで二人きりで暮らす姉妹。
母は死に、父は戦争で行方不明に。
年の離れた妹をひとりで育て上げた仕立て屋の姉のモンセは、精神を病み、父の幻想に悩み、広場恐怖症で外に一歩も出られない。
妹は18歳になったが、自分を産んだことで母が死に、それを自分で攻め続けている。
外で妹が男性と会っているのを窓から目撃したモンセは、彼女を激しく折檻するのだった。
しかしある日、上階に住むカルロスが階段から落ち、助けを求めてくる。
モンセはこっそりと彼を部屋で介抱するのだが…

姉がカルロスに恋をしているのを知っていながら、めかし込んで彼の横たわるベッドに行く妹。
そこにあるのは、抑制された生活への鬱憤と性 欲、若さゆえのものなのだけれど、女同士の愛と憎しみと挑戦と、複雑な思いを感じてならない。
同じく、妹に対する変質的な愛情を抱えるモンセも。
そして、この思いは全編を通して感じる事であるのです。

ずっとサスペンスで進むこの作品。
後半にホラーが待っています。やっほー!突然のB級色にときめいた♪

それまで、サスペンスとしては正直突っ込み所もあった。が、これによって全て帳消しっ‼ なるほど、これはそういう話だったのかぁ! イグレシア監督が製作してるだけあるな♪  笑った笑った! 仕立て屋故のナイス死体隠し場所♪
と、思ったところで、また話はサスペンスに戻り、そこからなかなかの展開になります‼

なんで妹は警察に電話しないんだ‼っていう突っ込み所も、複雑な心境であるが故のものだと思うのです。
辻褄があわないところもあるが、それは彼女らの精神状態のおかしさからくるのではないかと。

この映画で大事なのは時代背景です。
多分1950年代初頭のスペイン。14年前に父が戦争で消息をたったという事から、スペイン内乱後の話なのだとわかります。フランコ政権の抑制された時代の中、カトリック信者として女としての欲望を閉じ込めてきた女二人の、鬱憤の深さ。それを考えた上でこの映画は見るべきです。

冒頭、姉の読むおやすみの為の本であった聖書が怖かった妹。なぜ怖かったのか。それは姉の気持ちが伝わったからなのだろうと、後から感じます。

エンドロールにモルセの祈る手が何度も出てきます。
彼女の手はずっと気になっていたけれど、そこにも深いものを感じました。

ずっと名前のでてこない妹。
レビューを書くにあたってずっと気にしてたけど、でてこない。
何故なのかも考えさせられました……

この映画も、ラストありきなので、ネタバレになるから何にも言えない。言い過ぎてしまったかもしれない。「エスターを凌ぐ」ほどの衝撃のラストではないけど、それでもほどよい衝撃があります。一言でいうならば、良く考えられた密室サイコサスペンスの佳作♪
『白い肌の異常な愛』や『ミザリー』や、楳図かずおの『おろち』などの漫画的要素がありつつ、それだけではいかないハチャメチャなホラー要素。
で、A級ではないのに、B級色もあるのに、深く考えさせられる。

モルセ役のマカレナ・ゴメスの演技が素晴らしい。狂気と異常性と迫力と悲しみがありました。
MikiMickle

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