Torichock

モアナと伝説の海のTorichockのレビュー・感想・評価

モアナと伝説の海(2016年製作の映画)
4.2
「Moana/モアナと伝説の海」

僕の父は、今年で60歳を超える。
彼は真っ黒に日焼けをしている。
彼は10代の頃に出会った波乗りと、60歳を超えるこの歳になってもなお付き合い続けている。
流石にここ数年は、毎週のように海に出かけて行くようなことはなくなったみたいだけど、僕は父のロングボードに塗布するワックスの匂いが好きだった。

僕は数年に一回程度だけ父の波乗りに着いていき、参加させてもらう程度のものだった、どちらかというと、音楽や映画に傾倒してしまい、父と同じような海の男にはならなかった。もっといえば、彼の"息子と波乗りをする"という夢をちゃんとした形で叶えてあげられることはできていない、今は。
さて、それはまたの機会に話すとして、僕は前から、なぜ命を危険に晒す可能性も高いのに、彼らは頼りない板切れに乗って、海に帰っては押し返されるスポーツをやるんだろう?と思っていた。
大人になった今だからわかる。

目視もできない、そんな存在し得ない神という存在を、もしかしたら、感じ取れるんじゃないか?と。
波という、大地との呼吸に自分の身体を同化し預けることは、神との対話に近いんじゃないか?と。

そして、海・波、それに追随する神とその大地ともっとも寄り添う民は、この地球上にいて、僕はそれをこう思ってる。

"神に選ばれし民"

調べるとすぐにでてくるのはユダヤ民族だった。
その民族性を調べるのは楽しかったけど、僕が求めていた答えとはちょっと違っていた。
そこに

勇敢

戦士

を加えてもう少し掘り下げて調べていくと、やっと僕が求めていた答えにたどり着いた。

ポリネシア人(サモア人)

そう、彼らこそが神に選ばれし民、勇猛果敢な戦闘民族、僕はそう信じている。
例えば、ラグビーのニュージーランド代表チーム、オールブラックス。そのチームの中には、ポリネシア人はたくさん在籍している。
また僕がもっとも好きな戦士マーク・ハントを始め、カッコイイ!ロック様こと、ドウェイン・ジョンソンも、ポリネシアンとアフリカン・アメリカンのルーツを持っている。
相撲では、小錦や武蔵丸など、これまたカッコイイ関取がポリネシアンとしてその名を歴史に刻んでいる。

「NEXT GOAL WINS/ネクスト・ゴール!世界最弱のサッカー代表チーム0対31からの挑戦」というドキュメンタリー映画がある。
少しだけ違うルーツを持つ米領サモア人が主人公の作品だが、これらもまた、誇りと勇気を持った部族だった。
そもそも僕は、TRIBE感が好きなのだ。(EXILE TRIBEは嫌だ)

神に選ばれし、勇者の血を引く民。

なんてカッコイイんだろう。

この作品に根付いてるエネルギーに、その勇者の血を引くルーツを見つけた気がした。

人知を超えた自然や大地と海と神の存在に身を任せ、自分たちのルーツに誇りを抱きつつも、その上で自分を見つめ直し、変化させ、反省し、進歩することに挑み続けるその勇気と勇敢な魂に、強く鼓舞された。

鼓舞...
作中でマウイが覚悟を決めたシーンで舞う踊りがある。
オールブラックスが試合前に、鼓舞する闘いの踊り。
"ハカ"と呼ばれる舞い。

https://m.youtube.com/watch?v=f6guP-pLhzc

Ka mate! Ka mate! (私は死ぬ!私は死ぬ!)
Ka ora! Ka ora! (私は生きる!私は生きる!)
Ka mate! Ka mate! (私は死ぬ!私は死ぬ!)
Ka ora! Ka ora! (私は生きる!私は生きる!)
Tenei te tangata puhuruhuru(見よ、この勇気ある者を)
Nana nei i te tiki mai, (ここにいる毛深い男が)
Whakawhiti te ra! (再び太陽を輝かせる!)
A upane! ka upane!(一歩上へ!さらに一歩上へ!)
A upane, ka upane(そして最後の一歩、そして外へ一歩!)
Whiti te ra! (太陽の光の中へ!)
Hī! (昇れ!)


この踊りが見れただけで、すでに勇敢な魂の映画として大満足なのだ。

そして、その声をドウェイン・ジョンソンが演じているのだから、こんなにも出来すぎた話はない。もちろん、マウイに関してのみ、一切のオーディションを行わず、ドウェイン・ジョンソン直談判でアフレコをオファーした経緯も納得。
本当に素晴らしかった。


僕の背景には、圧倒的なルーツやバックボーンはない。
だけど、もしも大地との対話を重ね続けた父の血が身体を巡っているのなら、そして、それがまるで海のように強いエネルギーを持っているのなら、自分で自分を鼓舞して強く航海していかなくちゃ。

いつも心の奥に、Hakaを。
Torichock

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