海老川

解放区の海老川のレビュー・感想・評価

解放区(2014年製作の映画)
4.3
衝撃度でいうと今年イチくらい。
日雇い労働者の街、大阪は西成の釜ヶ崎を実際の映像を交えて描ききる。

映画の完成後、大阪市から実際の映像使用に伴う人権への配慮を理由に修正の指示が入り、監督はそれを拒否。完全自主制作に切り替えて5年後の現在劇場公開に至る。

もちろん低予算で映画としてのクオリティはそれなりなのだが、もう世間知らずのクソ甘野郎の私は題材だけでノックアウト。

漠然と「そういう」イメージは持ってたけど令和の日本にこんな街があってこんな人たちが元気に生活しているということが、悪くしか言えないが刺激的すぎるエンタメになっている。
この映画見た西成のおっちゃんが「10年前の西成やね」と言っていた。いや10年でも恐ろしいし、たった10年で劇的に変化は完了しないだろと思う。

それはその通りで、ネットに多く転がる西成釜ヶ崎のルポをちょっと見るだけでそこには異次元の生活が今も継続している。
作中、ドン底の奴らの気持ちを考えたことがあるのかという問いかけが為されるが、何を考えればいいのかも分からない。

でもこの街の一部はそこでしか生きられなくなった人たちの終着駅で、10年後自分だってここにいるかもしれないのだから、とにかく知れたことに価値があった。

単純に脚本も面白いし演技もセリフもリアルでのめり込んでしまう。言葉と感情を失うラストシーンもえげつない。本当にそれをやってた人が演じてるというのがもうたまらない。

法治国家の無法地帯で人情味を酒の肴にして生きている人たちをただ呆然と眺めるしかない映画。精神を削り取られた。
海老川

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