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最後まで行くのkazzのレビュー・感想・評価

最後まで行く(2014年製作の映画)
5.0
シリアスな物語になるだろうと高を括って拝見したら、振り回され爆笑しっぱなしで気付いたら終わっていた。気持ち良く裏切られた。

冒頭の前提となる出来事の周辺およそ10分前後で主人公の境遇、職、状況をコンパクトにあっという間に紹介してしまう手腕にぶったまげた。さらに出来事に対する主人公のいくつかのリアクションで彼という人物をみるまに描いてしまう細やかな演出にも驚いたが、何よりこのボリュームのある起承転結の"起"を僅か20分前後で描き切ってしまう省略演出も大変素晴らしかった。そしてこの最後まで重要な要素になるボディというサスペンス要素をまさかまさかでユーモアにしてしまう許容の広さにゾッとした。

緊張させて笑わせて、観客の興味の持続をちゃんと計算しておられる想像力の豊かさ。鑑賞中、すげぇすげぇとズッとぼやいていた。

中でも2ヶ所、映画的表現が爆発していたシーンについてもぼやきたい。

クライマックス前、廃墟に車を止めて同僚と話をしているシーンの終盤。
「あと数歩前へ」と電話で支持を受ける主人公。車を一歩一歩離れるたびに、何かが起きることを予感させる広めの構図。
カメラ自体が被写体と距離を取っていて、その距離感にも不穏感があり緊張感は、一秒ごとに増すのだが、ワンカットで納められる"本物"の衝撃がフィックスのショットの中で発生した瞬間の驚きと楽しさ。この見せ方をちゃんと前もってイメージできるのが本当に凄い!

もう一つは、クライマックスの格闘シーン。特筆すべきは銃の件。
「うわー!」と思わず言ってしまいそうになるのは、なぜかしら!
多分、あの件の銃こそがサスペンス要素で、神目線の観客だけが知り得る"ヤヴァイ"事実に、「シムラ!うしろ!うしろ!」と騒ぎたくなるんだと思う。

本作は、観客の想像力や視点を見事に計算した監督の想像力で全編がサスペンスフルかつユーモアに満ちた楽しい映画に仕上がっている。
映画を観たなーと嬉しくなって劇場を出れた。
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