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トイレのピエタのmのレビュー・感想・評価

トイレのピエタ(2015年製作の映画)
3.8
正直そんなに期待して見なかったので、野田洋次郎が普通にうまくて驚いた。この人はアーティストだと思った。
この人の頭の中は永遠に理解できないと思うし信者でもないけど、野田洋次郎という人間にとても興味がある。この作品を見てその興味がさらに深まった。

この作品は主役2人の良さに加えてリリーフランキーをはじめとした脇役も豪華で、映像の映し方や色も美しい。そして音楽も良かった。まず掴みのシーンのピアノが良くて、冒頭だけでこれは好きな作品だと思った。もちろん主題歌も良かった。
一つだけ音楽がメインとなる、森の中で威風堂々を歌うシーンは圧巻だった。

絵を描いているときの宏は分かりやすいほど生き生きしていて、絵をやめる前の本当の姿だと思った。この人にとっての生きることとはきっと長生きすること以上にこういう時間を生きることなのだ。
森の中のシーンしかり、基本的に表情のない宏が感情を出すときにこちらの感情もグワッと動かされる感じがある。

周りに見放されたわけでもないのになぜ自分から絵をやめて心を閉ざしたのかはよく分からなかった。ただ、それがあえて残した余白であるなら、野田洋次郎のミステリアスで全部見えないような演技でうまく表現されているとも言える気がする。

杉咲花は今注目されているだけあって、3年前のこの作品でも存在感があった。こちらも背景描写が最低限なので、「わかるけど見知らぬ大人相手にさすがに生意気すぎでは…」となったけど、ラストカットの表情が全てを表していてとても良かった。

(この二人は関係しないが、宮沢りえと杉咲花が何かしら病気に関わる役で共演しているので、このあとあの「湯を沸かすほどの熱い愛」で親子役になると思うと謎の感慨深さがある)

手塚治虫さん最後の作品の構想をもとにRADWIMPS野田洋次郎主演で映画化と聞いて、これ大丈夫か…と思って敬遠していたところがあったけど見て良かった。ただ手塚さんに詳しくないから楽しめたのかもしれない。少なくとも一つの映画としては良かったです。
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