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チャッピーのGIYA69のレビュー・感想・評価

チャッピー(2015年製作の映画)
4.8
もしも完璧な人工知能(AI)を持ったロボットが完成したならどうなるのか。そうなってしまった時に起こる危惧の部分、そして生まれたての赤ん坊と等しく純粋なAIと業の深い人間の違い、魂や生命とはなにか…、フィクションにおけるAIのテーマがぎっしりと詰まった映画である。

世界有数の犯罪都市ヨハネスブルグ。そこでは主人公ディオンが開発した人間型警察ロボットが、日々犯罪を鎮圧させていった。ある日ディオンは長年の夢であった「完璧な人工知能」を開発し、廃棄処分にされかけた壊れかけの警察ロボットに組み込むがギャングにロボットを盗まれてしまう。完璧な人工知能を搭載し、「チャッピー」と名付けられたロボットはギャング達と心を通わせ、絆を深めていくが…。

とにかく「細かいテーマが多い映画」ではないかと思う。大きなテーマは「人間とAI」だが、そこから完璧な人工知能が完成した未来の危険性」「精神と身体の価値」「無垢な心と貪欲な心の対比」など、細かい題材がストーリーのあちらこちらに散りばめられており、どの題材にもしっかりと回答が用意されているところである。この映画の素晴らしい部分の一つである。

ニール・ブロムカンプ監督はこの映画を作るにあたり「現実とフィクションの境界を曖昧にして作りたかった」と述べている。映画を観ていると「本当にこういった未来になってしまったら」「こういう人工知能が完成されてしまったら」という焦りのような感情が湧き出てくる。これは現実とフィクションが曖昧になればなるほど湧き出てくる感情である。近未来SFにリアリティを追求し、なおかつそれを完成させるブロムカンプ監督のセンスが溢れ出る作品だ。

本当に少しだけだが、残念な部分は一部だけカットされたシーンがあったところだ。そのシーンはストーリーにおいて重要かと聞かれれば首を縦に振るのは難しいが、演出上カットされなければもっとより良い雰囲気が味わえただろうと思う。どこがカットされたのか気になる人は、映画を見終えた後に調べてみてほしい。

多くの細かいテーマがあるとはいえ、内容自体はまったく難しくなく、すんなりと入ってくる見やすい映画だ。だからこそ視聴者に何を考えてほしいのかも伝わりやすい良い映画であるとも思う。だが内容について頭の中で議論しながら映画を視聴しなくても、チャッピーに感情移入して映画を視聴するだけでこの映画は相当な価値が生まれるはずである。

もちろんアクション、CGの技術も素晴らしく、迫力あるシーンも多い。ぜひその眼で観て色んなものを考えさせられてほしい。
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