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チャッピーのICHIのレビュー・感想・評価

チャッピー(2015年製作の映画)
4.0
まず、ダイアントワードの楽曲による中毒性で、AIロボットが自らの余命を取り戻すという多少シリアスでベタなストーリーにイケてる風を付加している。

ラストの、ありえないくらい早くて簡単な意識の「転送」はさておき、ストーリー自体はテンポよくイケている。

「意識」の開発に成功し、なんとかこれを育てたい創始者と、7日で2000ランド稼がなければ殺されるギャングと、余命を知ったチャッピーの「生きたい願望」がうまく絡み合い、進んでゆく。

自分たちが生き延びる為にチャッピーに様々な「悪事」を教えるニンジャと、「生まれたて」のチャッピーを赤ん坊のように可愛がるヨーランディに挟まれて混乱しながらチャッピーは急速に成長する。常時いる事ができなくて歯がゆい創始者は、チャッピーに、「犯罪だけは犯すな」、「人に何を言われても可能性を自分で潰すな」という事をチャッピーに教え込む。

創始者ディオンは、5日の余命が尽きるチャッピーを、どうしようと思っていたんだろう?という点は気になる所だが、とりあえず、ヨーランディの愛情やニンジャの犯罪性、警察を憎むガキたちの憎しみやディオンのことばを吸収して、楽しいことも辛いことも経験するチャッピーの気持ちが、視聴者のこちら側にもダイレクトに伝わってくる。

チャッピーがロボットなだけに、視聴者自身が自分を其処に投影しやすいような、感情移入しやすいような気がした。

なんと言っても、ただの教育映画、説教映画系にならずに、しかも狂暴過ぎたり戦争映画チックにもならずに、独特のポンコツさと愛らしさと胸熱と、それからギャング性をうまく混ぜ合わせた「子供映画エンターテイメント」のような世界観が魅力的。

ダイアントワードとして出ているニンジャとヨーランディの、大人なのか子供なのかわからないスタイル、彼らの音楽、犯罪性に満ちながら愛情とポンコツさとカッコよさを感じるカリスマ性。

「テンション」とプリントされたドラゴンボールよろしくのオレンジのズボン、ニンジャという名前。日本の中二病とアニメオタクをそのままはき違えて表したような彼らの作り出す「本物」の中毒的音楽。

それらが、オモチャのような「チャッピー」というストーリーに、子供なのか大人なのかわからない反抗と創造性とビートを与えている。

ダサイ武装ロボットとチャッピーらが対決するシーンの、音楽に合わせたカット回しは、そのままMVにできるほどカッコいい。

監督のセンスが光っている。

ディオンとチャッピーとヨーランディの結末には正直「ん?」と安易さに首を傾げたが、くそ真面目にやっちゃって下手にバッドエンドにするよりは、こうやって思い切りハッピーエンドにしちゃった方が「チャッピー」という映画の毛色としては成功だったのかもしれない。


チャッピーの「パトレイバーパクってないよね?」疑惑はさておき、子供もファミリーも楽しめる、ちょい悪でタイムリーなロボット映画だと思った。
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