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トイ・ストーリー4のmのレビュー・感想・評価

トイ・ストーリー4(2019年製作の映画)
4.9
いきなり私事で申し訳ないのだけど、うちの甥っ子が自分が子供の頃遊んでいたゴジラやガメラのソフビ人形で遊んでいるのを見て、「トイストーリー3」のあのラストを思い出して大変エモい気持ちになった。
恐らく全人類誰もが子供の頃の大切な友達だったおもちゃ達の事を思い出して涙を絞り取られたあのラストからまさか続編が作られるとは思わなかったが、蓋をあけてみればこれが最高傑作と言える出来!

『子供達が大人になる時のおもちゃ達との別れ』を描いた前作に対して、今回描かれるのは『子供達を送り出した後のおもちゃ達個人の人生の行方』である。生命を持った『個人』としてのおもちゃ達を描くシリーズである以上、ある種の『老後』というか『子離れ』を描くのは意外ではあったけど確かに必然性がある。ああこれは確かに『彼らの物語』なのだと、何か途方も無いドラマを観ている気になった。


冒頭のウッディとボーの別れのシーンから演出が静かに猛烈に上手くて、溢れ出すエモーションに涙する。今回とにかく演出が上手くて、ドラマも活劇もギャグも全て完璧に紡がれていく。

サバイバーとなって全く違う活気と魅力を携えて再登場したボーを筆頭に、女性キャラの描き方が素晴らしいのが良い。
ボーの変化に対して色々と文句を言っている人もいるようだが、こんなに魅力的なキャラになったのに一体何を文句を言う必要があるのだろう。しかも彼女のキャラクターの根底の想いは変わってはいない事が、ドラマにおいて大きなポイントになるのに。


『いつの間にか無くなっていったおもちゃ達』や『自分でゴミで作ったよく分からないおもちゃぽいやつ』といった誰もが身に覚えのあるモチーフを巧みに取り入れた脚本も見事。

『悪役』であるギャビー・ギャビーのこれまでのシリーズにない哀しみと、それへの造り手の思いやりが素晴らしい。全ての登場人物への思慮深さと優しさが感じられる作品で、それがこちらの胸を打つ。
子供ではなくなった俺たちもこうして生きていくし、もう離れ離れになったおもちゃ達もきっと彼ら自身の『生』を生きていく。子供の頃からの付き合いのキャラクターとの別れは切ない。ああ、さようなら、みんな。
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