ジェイクが本当に夜を這いずり回る獣のように見えた。アカデミー賞脚本賞ノミネートには納得!
あらゆることをネットから学んだが、人とうまくコミュニケーションがとれない男。
でも、ネットから学んだ知識を正論として怯むことなく人に説教垂れるという身の程知らず。だけど、そんな奴が、自分の天職を見つける。それは、事故現場の凄惨さをカメラに収め、テレビ局などにうりさばくという仕事。
社会のルールを知らない彼だからこそ、倫理のかけらなど持ち合わせていない彼だからこそ撮れる映像。
元々は盗んだものを売って生きていた男。警備員を叩きのめし、そのついでに腕時計を奪い平然と身に付ける。自分の正体を知っている相手に、働かせてくれと自分を売り込み、断られる理由が分からない男。
「盗人は雇わない」とはっきり言われて初めて納得するが、「なかなか上手い断り文句だね!」くらいの調子で、腹も立てない。
こいつ間違いなくサイコパスだ。
彼の撮影した映像を、自分の職場のポジションのために高値で買い取るベテランの報道番組の女プロデューサー。最初は彼女から値切られたものの、次第に立場が逆転してゆく様子。人が目を背けるような、人の不幸をこれでもかと映し出した映像で食ってる女を含め、倫理感の欠如しているテレビ局の在り方、そしてもちろん、それを見たがる視聴者の在り方。
こんな男を育てているのはなんなのか?
この主人公が文字通りコヨーテだとしたら、彼は自然界の仕組みの一部でしかない。この社会のサイクルの一部。
現代社会が生み出した突然変異のようなこの男が、この社会で次第に確実に自分の種を増やしてゆく様がなんとも空恐ろしい。
あの腕時計は、彼の盗人であるという本質はなんら変わっていないことを意味している。コヨーテは決してライオンにはなれないが、今人間社会の生態系があるとして、それが変わりつつあるとしたら?
タクシードライバーに通じるものを感じるが、本作には悲哀のようなものはなく、サイコパス映画にとどまっているところが惜しい。でも、それが狙いなのかな。