じゅんP

ボーダレス ぼくの船の国境線/ゼロ地帯の子どもたちのじゅんPのレビュー・感想・評価

4.6
イランとイラクの国境沿いにある川、放置された一隻の廃船。まず描かれる、船で暮らす一人の少年の生活。見つかれば発砲される立入禁止区域のため、船と陸地の間は潜水で行き来し、船内から採った魚を捌いて干物にし、貝殻を加工して作ったものを売ってわずかな金を得る。常に物音に警戒し、米兵から身を隠しながら。

孤独ながら賢く生き抜く少年の生活圏に、ある日向こう側から別の子供がやって来ます。ライフルを持ったその子は、船内を二分するようにロープを張りそれぞれの陣地を主張、線の向こう側を解体しては部品を売りにいきます。文句を言おうにもかたやペルシャ語、かたやアラビア語の2人の意思疎通はかなわず、ディスコミュニケーションを抱えたまま船をシェアすることになり…

その後、赤ん坊、そして米兵と船内に人が増えては関係性が変化、人が増えてもやはり言語によるコミュニケーションは取れず、それでも心を通わせられるような少しばかりの実感と、現実の隔絶と、色んなものがない混ぜになって押し寄せてきます。

ちょっと毛色は異なりますが、ダニス・タノヴィッチ監督の『ノー・マンズ・ランド』にも通じる余韻。足跡やハンモックによる演出が頭に残る。縮図としての船、かりそめの相互理解に揺られて。
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