あおは

ワイルド・スピード SKY MISSIONのあおはのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

SKY MISSIONを観る前はいつも少し覚悟がいる。大好きなポール・ウォーカーの遺作でありブライアンがファミリーとして一緒に戦うのが最後だから。
でもやっぱり本当に心から好きな作品だから定期的に観たくなる。

SKY MISSIONが大好きな理由のひとつに敵役が大好きなステイサムであることも含まれる。ステイサム演じるデッカード・ショウが病院で弟のオーウェン・ショウを見舞っていたと思えば、病院のなかは物が散乱し火が出てめちゃくちゃなことになっていて、デッカード・ショウがとてつもなく強いことが明らかになるところからはじまる。このはじまりかたが最高。大好きなステイサムが最強の敵。こんなに上がる展開ないよね。
資料こ記述から明かされるショウの強さと恐ろしさ。政府に記録が残っていないイギリス軍の特殊部隊員で、工作員20名が送り込まれ殺そうとしたが忽然と姿を消し、常識の通用しない影のような存在としてイギリス最強の殺し屋とされている。伝説的でもあるしシャドウのような不気味さと恐ろしさも含んでいるところがものすごくかっこいい。
ショウが襲ってきたときに、ホブスはドムたちのことを庇い俺が1人でやったと言ったり、爆風に吹き飛ばされたときもエレナの下敷きになったり、彼にもファミリーのような仲間を守る強い心があってより好きになる。TOKYO DRIFTで分かっていたけれど前作でジゼルを亡くしたハンは彼女との約束の地、東京へ行っていたことが分かり、それほどに愛が深かったのかとハンが愛おしくなるし、そこでショウに殺されたというのも切ない。生きていたから良かったけれど。

SKY MISSIONは好きなアクションも多い。
ひとつはラムジーを救出するため、襲うことが絶対に不可能とされる場所で襲うという考え方。一般的には馬鹿に見えるこういう考え方が成功を手繰り寄せるのだろうなと思うし、それを当然のように飲むファミリーも肝が座ってるなあと感心する。
では一体どのようにそこまで到達するのかという疑問が浮かぶが、車にパラシュートをつけて空から着陸するという方法も狂っていて大好き。もう何でもありなんだよ、ワイスピは。まじでおもしろい。怖気付いてなかなか降りないローマンを無理やり降ろすときのテズのイタズラな表情が笑える。
レティの「Touch down baybe」がいつもめちゃくちゃかっこいい。
ここからのラムジー救出のための戦闘もやったりやられたりで見応えあり。
運転手が撃たれて横に倒れ崖に向かって滑っていく大型車の上をブライアンが走り全身で飛ぶシーン。静寂のなかでブライアンの声が響き、レティが助けにくる。声が木霊するような大自然のなかにある小さな人間。この場面ではいつも人間の小ささと儚さを感じる。
「向きが逆よ」とラムジーが指摘したあとの豪快なダウンヒルもかなりタフで笑えてくる。

「お前は列車や飛行機から跳んだ。勇敢なやつだ」「そうか?」「いちばん勇敢な行動は夫になったこと。父親になったこともだ」

このドムのセリフはワイスピのなかでもかなり好きなセリフ。一般的には列車や飛行機から跳ぶほうが勇敢に見えるけれど、銃弾や犯罪に囲まれ刺激的な毎日を送ってきた彼らにとっては夫になること父親になることは馴染むのが相当難しいことで、また危険なことばかりしてきたドムたちだからこそ説得力がある。自分はまだ若くて夫でも父親でもないけれど、このセリフを聞くたび、いつも親のことを思い出し、どのような覚悟だったのだろうと思いをめぐらせる。

アブダビの高層ビルでのシーンも大好き。ここにも好きな要素がたくさん詰まっていて、ローマンがパーティーで滑り倒しているのも本当におもしろいし、テズにはお前強いんかいとツッコミたくなるし、テズは戦い方がかっこいい。
そして夕焼けの最中、ビルとビルの間を二度も車で飛ぶ。ブライアンがミニカーを投げた息子に車は飛ばないと言っていた伏線もあり、余計におもしろい。とにかく発想がすごいし美しいし、言葉にできない。

SKY MISSIONにはコナンの映画でオマージュとして使われているなと思う箇所がいくつかある。
まずは神の目。これは『黒鉄の魚影』で出てきた老若認証システムを思わせる。また銃弾を放つヘリコプターは『純黒の悪夢』を彷彿とさせるし、立体駐車場で走り回ったあとに飛び出すのは『ゼロの執行人』を思い出す。

ヘリコプターに乗った敵を倒したあと、ドムが記憶を取り戻したレティに待っていたぞと言ったときの、レティの涙と喜びと安心の入り交じった表情と声。ここはいつも泣ける。

そしてSee you againが流れる海のシーン。前奏が鳴った瞬間、鳥肌が全身を駆け巡る。感動ではない。感動に似た何かや寂しさや切なさ、強い愛などさまざまなものが一気に溢れてくる。

ポール・ウォーカーへの思いとワイスピへの思い、ステイサムへの思い。たくさんの好きが重なった作品でもあるし、それらを抜きにしても純粋にものすごくおもしろくて、傑作だと思う。
あおは

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