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死んでもいい経験のnetfilmsのレビュー・感想・評価

死んでもいい経験(1995年製作の映画)
4.0
 天空へとそそり立つ白い陸橋の流線形の造形美。自動車教習所へと向かおうとする女は、仕事で朝帰りした夫と鉢合わせする。イ・ミョンジャはまだ路上に出ることは許されず、教習所の中を走っていると、運転の上手い一人の淑女チェ・ヨジョンと出会う。ヨジョンは坂道練習の際、前の車を運転する女と衝突し、思いがけなく口論になる。ミョンジャが帰宅すると、夫はただひたすらに身体を求めて来た。保険外交員の夫と結婚して5年、残念ながら夫婦は子宝に恵まれなかった。ある日のスーパーマーケット、食品を見ていたミョンジャのカゴに教習所でヨジョンと揉めた女が財布を盗まれたと言いがかりをつける。だがここでも偶然買い物に来ていたヨジョンが証言者となり、ミョンジャの身の潔白を証明する。近しい場所で奇妙な遭遇を繰り返すミョンジャとヨジョンとは次第に仲良くなって行く。ミョンジャに言いがかりをつけた女の正体は、3人のコブ付きの夫の愛人だった。

 自動車事故に決定的なトラウマを抱えた女は、どういうわけか自動車教習所に通いながら、5年間子供の出来なかった女に交換殺人を持ちかける。ミョンジャは5年間連れ添った夫に裏切られたばかりか、夫は妾にパイプカットされ、最初から不能だったことを後から聞かされるのだ。ヨジョンは自身にトラウマのある自動車事故で、まったくの赤の他人であるミョンジャの心に寄り添おうとする。彼女は息子を交通事故で失ってからというもの、息子のような若い男の精力にむしゃぶりつくが、まったく満たされることはない。そればかりか破天荒な芸術家に抱かれるが、夫はそんな彼女の情事の現場に後から現れては、男どもをただただ抑圧する。冒頭の天空へとそそり立つ白い陸橋は、女たちが妄執する男根のメタファーに他ならない。それぞれ病的な恨みを抱えた3人の女たちは、自分たちにブレーキをかけるために教習所に通うのだが、3人のトライアングルは緊密になるとそのバランスを著しく崩す。歪んだ生殖の結果、生まれた子供には何の罪もありはしない。
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