たむランボー怒りの脱出

縛り首の縄のたむランボー怒りの脱出のレビュー・感想・評価

縛り首の縄(1958年製作の映画)
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ポーランド派の中でも日本ではあまり馴染みのない作家、ヴォイチェフ・イエジー・ハスのデビュー作。

彼はポーランド派では珍しく耽美で幻想的な作風(らしい)が、この映画ではその要素は薄く、基本的にはリアリズムに則した作品であった。

アル中の中年男が断酒を決意した朝から始まる物語。
気をまぎらわせるために街をフラフラ歩くが、人と出会う度に彼は苛立ちをあらわにする。

彼が人と会う度に苛立っているのは、「過去」を思い出してしまうからだろう。
親しげに話しかけてくる旧友でさえも、彼にとっては忌々しい「酒」と同じく、忌々しい「過去」なのである。
断酒を決意した朝以前の事柄全ては過去である。

終始苛立っている主人公の表情、どんより暗ーい画面。
陰気な要素満載の映画であるが、僕は嫌いじゃなかった。

人に会いたくないと思いながらも、酒場に行きたい衝動を押さえきれない主人公の存在は、案外リアルだと思う。