EnzoUkai

SHARINGのEnzoUkaiのレビュー・感想・評価

SHARING(2014年製作の映画)
4.5
敢えてこの作品をインディーズ映画とカテゴライズさせて貰って語るなら「映画は執念の塊である」と言いたい。
制約と労苦をバーターにかけ完成したこの作品は何と神々しいことか。世界中を旅してるのか?彷徨っているのか?、いずれにせよこの映画に出会える機会に恵まれたことは一映画ファンとしてこの上ない喜びだ。

ポスト311ものであるが、それはポスト第二次大戦でもありポストベトナム、ポスト阪神大震災、ポストオウム、ポスト911、、、枚挙にいとまがない。我々人間は常に傷ついている。いつどこで何が起きるかわからない不安定な感覚の上で傷つくことを恐れながら生きている。この映画はそうした私達の心理と向き合う映画だ。
この映画本編について、所謂映画的に論じるのはなかなか難しい。映画のフォームに関しては他にも論じられているのでそれを参考にして貰いたい。この映画で得られるカタルシスはスクリーンから得られるとは言い難い。スクリーンはさながら自分を写し出す姿見のようなもので、2時間弱自分自身と向き合わされる錯覚に陥る。いや、決して錯覚ではなく、自分自身が抱える日常の不安感と向き合わされるのだ。
巧妙なメタ構造は心理学に立脚し計算され尽くしたものだろう。これは何もストーリーだけを指すのではなく目に飛び込む幾何学的な情景や不穏な雰囲気を醸し出す音響が観てる者とスクリーンとの隔たりをなくしていく。
役者達の鬼気迫る演技も素晴らしい。フィクションなのかノンフィクションなのか途中で判別がつかなくなる。目の前で社会心理学者に話しかけられ、自分を見失う女子大生を気遣い、酒好きの先生と居酒屋にいる、そんな生々しい感覚になる。
正に、自分は夢の中にでもいるかの様な。。

インディーズという話に戻すと、多くの人にとってこの映画と出逢う機会は少ないでしょう。だからこそ、この映画に出逢う幸福を一人でも多くの人に味わって欲しい。
恐らくこの映画はまだまだ旅を続けるだろうし。
EnzoUkai

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