りっく

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォーのりっくのレビュー・感想・評価

3.6
宇宙を危機に晒すような強大な力を持ってしまう6つの石を巡り、それを集めようとするサノスと、阻止しようとするアベンジャーズ軍団との攻防を描く。

ほぼ無敵でいかつい表情をするサノスだが、石を集め力を得ていくに従い、どんどん哀愁が漂ってくるのが面白い。彼は食料や資源に限りがある中で、無作為に半数を殺すことで人口を調整し豊かで幸せな社会にしようとする信念を持っている。だが、仲間や友人や愛する者がいれば、無作為に生きる権利がある者とない者に分けることなんて不可能なはずである。だからこそ、無限の力を手に入れ発揮すればするほど、自らの孤独と、その寂しげな人生が浮き彫りになっていく。

また、そんなサノスが唯一愛した娘も、幼い頃に幸せを思って養子にし不自由なく育てたはずなのに、その愛は全く伝わらず、そして石を得る過程で、最もかつ唯一愛している娘を崖から突き落として殺してしまう。愛する者を犠牲にしてまで得る力に一体何の価値があるのだろうか。強面の仮面に隠された困惑と苦悩と葛藤が観る者の心を捉える。

一方で各キャラクターに見せ場を配し、粋な決め台詞や捨て台詞で緊張と弛緩、あるいはいい意味でのユルさや可愛げをエンジンにした演出は快調そのもの。ガーディアンズオズギャラシー御一行が加わったのが大きい。

あるいは、新しく加わったブラックパンサー率いるウガンダ帝国もまた興味深く、開国したらオリンピックやスターバックスが来るのを楽しみにしていたのにというセリフが象徴するように、開国するやいなや戦争に巻き込まれ、そして実際の戦場と化してしまうところに、メッセージ性を感じる。

だが、本作の全体の印象は、なぜ石集めを2時間半も見せられ、こんなに消化不良な形で幕を閉じるのかという困惑である。ますます一見さんお断り感は強くなっていき、一本の映画としてどんな形であれ一区切りつけようとするような意志が感じられない。隣の外国人がエンドクレジットが表示された瞬間「What?」と思わず叫んでいたが、同じ気持ちである。いつまでユニバースに付き合うことになるのか。
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