りっく

アベンジャーズ/エンドゲームのりっくのレビュー・感想・評価

4.5
10年余の歳月をかけて描いてきたマーベルユニバースの集大成となる本作は、まさに最期に相応しい見事な出来栄えで、大袈裟ではなく3時間もの長尺を一瞬たりとも飽きさせない、観る者を万感の想いに誘い心を震わせる驚異的な作品である。

まず本作の導入が見事。敗北と喪失からはじまり、ヒーローとしての自らの存在意義を問い直され、生き方を見つめ直すかつての英雄たち。職務を放棄し酒に溺れたり闇社会で暗躍し現実逃避する者、罪悪感に苛まれ愛する者を失った残された者のために奉仕しようとする者、そして残された家族と今までの時間を埋め合わせようとする者。アベンジャーズを再集結する過程で、現実との向き合いや折り合いのつけ方から、各キャラクターを痛みを伴いながらも手際良く描いてみせる。

中盤はまさに敗者復活戦と言わんばかりのタイムパラドックスものへと流れていくが、バックトゥザフューチャーをはじめとするこの種の作品群とは異なるルールづけであることを強調し、設定が複雑化することを避け、あくまでもシリーズの歴史の積み重ねの上で新たな未来を描こうとする。ここでの石を強奪しようとする3つの舞台が用意されるが、スパイものの要素をはじめとして各々に異なる味付けが施されているのも飽きさせない。

そしてサノス軍とアベンジャーズ軍の一騎打ちへと雪崩れ込む。戦場となる舞台はどこかレディプレイヤー1を連想させ目新しさはないが、そこでの各キャラクターの見せ場の作り方は驚異。見事な交通整理力で、息つく暇なく集大成を描き切ってみせる。ここで重要なのは、敗者復活戦から勝ち上がり最終決戦を迎えるものの、決定的な喪失はもう元には戻らないという厳格な線引きを施している点だ。だからこそ、各々は楽観的ではなく、悲壮感に打ちひしがれ、使命感に燃える。だからこそヒーローが改めて躍動する瞬間に感動してしまう。

今まで数々のヒーローを描いてきたマーベルだが、ロバートダウニーJr.、クリスエヴァンス、クリスヘムズワース、マークラファロ、スカーレットヨハンソンという功労者というべき初期メンバーへの花の持たせ方のバランスも見事で、彼らの勇敢な姿に心が震えると同時に、感謝の気持ちで胸がいっぱいになる。
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