JIZE

プリデスティネーションのJIZEのレビュー・感想・評価

プリデスティネーション(2014年製作の映画)
4.0
まず結論。連続爆弾魔の実態をあくまで補助線に掲げ,バイオリンケース型の時空移動装置を幾度となく駆使し"ジャンプ機能"を多用し時系列を何層も歪ませ前後し生ずるタイムパラドックス現象や主人公が店主を務め相談に乗る居酒屋POPS PLACE内で語り口調を通じ自明する約1時間に及ぶ"ある人物"の自叙伝話(重要)。この2双方を本幕に繋ぎ起動させる今作物語はSF過去作のありきたりな既存概念を打破し同時に裏切りや憎悪,嫉妬の悪行感溢れるダークユーモアな悪しき印象だった。CMや公式予告での"衝撃作"推しもバーテンダー(主人公)が予期せず辿る禁断末路や爆弾魔事件の閉ざされた真相を把握すればあながち間違いじゃない。昨今SF作品中でも真新しさや刺激を望む上で興味深かった。ゼロ地点の1981年を原点に多層構造のタイムパラドックスが生じ時空移動も軽快でサイコスリリングに設定された演出面でも丁寧で楽しめた。難解なSF作風と単純明快な任務目的..このパラドックスが誤読出来る余地を鑑賞後の余韻として与え解釈が開かれてる分見解も様々で良い。
仕事外はPOPSBARの店主,普段は政府エージェントとして秘密裏に所属し活動する組織内描写や上司との任務連絡を繋ぐ交信描写がほぼ削がれ内膜に隠し通される意図も末路を意識し判断すれば逆に明白で逆算的に考察する恐ろしさは今作を味わう醍醐味に思う。カタルシスは真相解明場面に全て集約。
核心に迫る連続爆弾魔事件の禁断的真相やエージェント組織の不穏な動き等,全事象の鍵人物ジェーン面でも,組織入社を目的とした奇妙な多岐に渡る訓練数々やある事象を機に女性→男性に性転換を余儀無くされ不幸な人生を背負う災難等全て末路に繋がる不可逆的伏線と判断され多層構造は常歪み綿密に思う。
総評。悪因は序盤以降,約1時間に及ぶ"ある重要人物"の自叙伝話。せめて幕閉じ間際20分程度に収めてほしかった感は物語本筋を過度に抑制する意味で否めない。SF要素より人間ドラマがこの時点で圧倒され今作ベクトルが感動よりに推移し転化した印象。冒頭「お前の人生を壊した男を差し出すとしたら殺すか?」と終盤デジャヴ演出も伏線を過度に煽る風で残念だった。R15+描写のSEX場面も削げばレーティング皆無で済んだんじゃ感が...。ジェーン面での否定部分では,純血主義や変人意識も伏線的に曖昧...。組織の入社面接を受ける場面でも宇宙へ行けるが志望動機って子供⁉︎あと喧嘩が理由で資格剥奪って等々。
良因は政府組織ロバートソンの全言動が連続爆弾魔事件や時空転移装置の不慮原因に対し直接的に伏線解明に直結しメタ構造的にも鑑賞者を投影する構成。彼も謎解きを紐解く重要人物だった。授乳室での会話が最後だとすればタイムパラドックス独自のループ世界を通じた悪しき改竄問題が処理され今作は誠実を装う悪質映画だと思う。
従い,主要登場人物は主に3人!真相解明が成されるまでのSF醍醐味も充実!!釈97分設定も適度に納得!!!SFパラドックス映画を装う伏線深き人間ドラマ(前半特に)として是非,オススメです!!!!
JIZE

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