自己に対する感情はそれが嫌悪感や劣等感であれ、自己愛の表裏によってなされるものであり、根源的には愛なのだと思う。自己愛はただのナルシズムとしてだけでは説明できず、生命を尊いものにとらえるための不可欠な要素で、希望や理想、自省までももたらす、前進するための感覚でもある。そんな自己愛が仮に自分の内側のみではなく、時空を介して外側からも得られてしまったら、そんな自己愛の檻がこの映画では用意されてしまっている。それは、単なる愛や優しさなのか。希望でもあったかもしれないが恥じらいでもあったように思う。ただ唯一だとしても、自分を愛する自分というのは紛れもない存在で、そこに信頼はしていたいし、たとえ負けが決まっていたとしても勝ちに賭けることはまぬがれられない。
二人の男がバーで出会った。たわいもないはずの身の上話。酒の肴には喜ばしくない重たい話。そして、なんやかんやで時空を超える。「えっ、まじっすか」と急な展開に驚きながらも、しっかりと引き込まれる。理論や説明を一切省き、ビジュアルでみせるスタイルでテンポが良く、スタイリッシュ。古き良きバーの店内もまさにSF的。スローテンポな前半から無駄なく叩き込む後半まで、きっちり製作者の意図通りに興奮を操られた。小品感は拭えないながらも、とても綺麗に作られた良い映画。メビウスの輪やウロボロス的な一種の悪夢。