Clara

スポットライト 世紀のスクープのClaraのレビュー・感想・評価

4.0
カトリック教会の信じがたい実態を報じた米国ボストン・グローブ紙。その内容は、神父による児童への性的虐待と組織ぐるみでの隠蔽。教会の闇を暴いた記者たちの実話。

事件の真相に迫るべく奔走する記者たちの熱意が伺える内容で、ジャーナリズムについて考えさせられる話でもあった。
スポットライトでは、この事件に関する記事が600本出稿されたというから驚きだ。対象になった神父の数の多さにもたまげたけれども。

カトリックはアメリカだけにいるわけではないから、これは世界的かつ根深い問題だったわけだ。内容的にも証言を拒む当事者が多くなるのも一つの要因だが、神父に求められる「禁欲」がそもそもの原因の一つという考えに対し、なるほどと思った。

信者にとっての教会。その存在の大きさがマイナスに働いたケースの一つだったことがよくわかるが、この存在感そのものについては、日本人だとなかなか理解が難しいところだろう。ただ権力という点では、日本のお寺も同じようなもの。ただカトリックは世界中に存在し、ネットワークがしっかりできあがっているところ。それを使えば、世界規模で隠蔽だろうがなんだろうができてしまうという事実を突きつけられた。

この大規模な隠蔽工作…なんとも恐ろしい。内容的に証言を拒む当事者が多くなるのも一つの要因だが、神父に求められる「禁欲」がそもそもの原因の一つという考えに対し、なるほどと思った。
この問題が公になるまでにかかった年月は、なんと30年。その間、1000件以上の被害が発生していたにも関わらず、被害者たちは沈黙せざるをえなかった。しかもこの間、ジャーナリズムが機能するチャンスはあったのだ。それを記者たちは見逃してしまっていた。そして、調査の最中でそのことに気付き後悔の念を抱く。その時の編集局長のフォローが印象的だった。自分が知らないことは知らないと認め、誰を責めるわけでもなく、これまでに部下たちがやってきた仕事を正当に讃えている。この編集局長、物静かながらも内には熱があり、リーダーとして魅力のある人物に思えた。

最後まで諦めずに真実を追った人たちと、つらい過去を思い出して協力した被害者たちに拍手。
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