カズミ

ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密のカズミのネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます

本当に久しぶりに映画館に行った!!
誘ってくれた友人に感謝したい。最高だった。

前作は設定を詰め込みすぎて、一時理解が追いつかない状態になることが何度かあったが、今回はむしろ一度で飲み込めるほど話は単純にわかりやすくなった印象がある。
それが鑑賞直後に一種の物足りなさを生んでしまったことも確かだが、戦闘シーンなどは迫力があり素敵だったし、振り返って反芻するほどキャラクターにも愛情が持てて、トータルとしては前作よりも好みだった。

主軸になる魔法動物が予告で隠されていたため、「あ、その設定を使うんですね?!」という驚き。まさか東洋思想の“麒麟がくる”がウィザーディングワールドで拝めるとは。
マニ車に描かれた首を垂れる動物は馬だと思っていたけれど、麒麟だったんですね。

ただ、タイトルを“ダンブルドアの秘密”としたのには、些か違和感がある。
グリンデルバルドとダンブルドアが恋仲であったことは明言されていないにしろ、原作ファンにとっては周知の事実であったし、アリアナが亡くなった経緯も説明されている。
クリーデンスが甥であることも驚きはしつつ、インパクトとしては弱い。
個人的に一番の衝撃は、妹・アリアナがオブスキュラスを産むものであったことだが、考えてみればそれも当然のことなのかもしれない。
それよりも、メインに据えられていたグリンデルバルドの暗躍をタイトルに持ってきた方が肩透かしを食らわずに済んだのではないか、という気さえする。

それにしても、代役マッツ・ミケルセンには惚れた。
元々、ジョニデバルドとジュードドアが友人という絵がどうしても思い浮かばず、頭を捻っていた勢だったもので、今回ほどしっくりくるキャスティングはなかった。
ジョニデ版の様相だと、生まれてこの方サイコパス感漂うキャラクターだったものが、紳士然とした行き過ぎた指導者の像にガラリと変わった。
個人的にグリンデルバルドはヴォルデモートとは違い、支配と権力のために知性を利用するのではなく、知性があるため、支配と権力志向に行き着いた人物を想定していた。彼には矜持があり、自分が上に立った後のビジョンが見えている。
その雰囲気がぴったりなのだ。群衆に担ぎ上げられているシーンなど、まさに帝王といったオーラがある。

「私はお前たちの敵ではない」というセリフも、マッツバルドが言えばこそ、彼にとっては偽りなき言葉なのではないか、と信じられる。愛情を理解できる人間なのではないか、と。
血の誓いのペンダントを鑑みても、裏切りの念がよぎるだけで自らを殺す魔術がかかっているのなら、所有者に莫大な危険が及ぶことになる。
それを数十年首にかけ、肌身離さず持っていたということは、ダンブルドアを真に愛していた証になりはしないだろうか。
全編を通して、いやむしろハリー・ポッター原作版から気になるキャクターではあったが、株がさらに爆上がりした。

なんだかしれっと戻って来たクイニーとジェイコブの展開の早さには口を開けたが、再度想いを結ぶシーンでは思わず泣いてしまったし、テセウス奪還のシーンでは吹き出すのを堪えるのが大変なほど内心大笑いした。
(なぜ皆あの静寂を保てるのか。度々挟まれるえぐい死人の亡骸がなければ、確実に私の笑い声が映画館に響き渡っていたことだろう)
一喜一憂と感情の波に襲われる、ファンタジー映画の良さを存分に味わえる作品だった。

全5作を想定しているとのことだが、今までの伏線はほとんど回収してしまった気がする。いわば前半戦終了、といったところか?
あとは一切描かれなかったナギニの経緯と後のヴォルデモートと繋がる心境の変化などを次作で期待したい。

前作の後半で原爆を彷彿とさせるシーンを挿入したり、今回の政治の舞台をドイツにしたりと、第二次世界大戦との関わりが色濃く出ている感じがするが、そうなると今後日本が作中に出てきたとして、その描かれ方が気になるところである。

全体的にハッピーエンドで終わった今作。次作からJKR節が炸裂するのを期待する自分と平穏であってほしい、と願う自分が喧嘩している。
カズミ

カズミ