Torichock

スーサイド・スクワッドのTorichockのレビュー・感想・評価

スーサイド・スクワッド(2016年製作の映画)
4.3
「Suicide Squad/スーサイド・スクワッド」

悪いヤツらがチームを組んで、最凶チームで悪が悪をめちゃめちゃにする

きっと、いやもちろんみんながみんな、そんな映画を望んでいたと思うし、それに関して言えば裏切られた!とか、期待はずれ!とかいう気持ちもわからいじゃないが、逆に、みんなが望んでた通りシロモノが出てきたらそれでサムズアップなら、それはそれで、出たら絶賛!みたいな流れになりつつあるMCUみたいで、僕個人としてどうかと思う。
みんなが期待してた映画感に対して、控えめに中指を突き立て裏切り、こんなにも愛しいラブストーリーに仕上げてくれたことに、僕は感謝したい。
だって、期待と違うものが出てきて、それがそれはそれですごく意義のあるものだったらそれでいいじゃない。

テキトーなヤツがテキトーなコト言いながら、テキトーでかっけー!みたいな雰囲気な「デッド・プール」にガキ臭さを感じた僕からしたら、悪いヤツらが悪いコトやって、悪かっけー!みたいなのは、そんなもう望んでなかったので、僕はこれでいい。それは、「日本で一番悪い奴ら」で楽しんだんで、けっこう!

だって、この映画は愛と許しの物語だもの。

悪党とされてる奴らは、それぞれ弟を、好きな人を、恋人を、娘を思うあまりに崩れていってしまった連中なのだから。

本当に悪いヤツっていうのは、正義とか悪を分別して押し付けがましく決める奴らだったり、それを利用する連中のことなんだと、僕はそう思ってる。
良い子しかいないのがつまらない?
生きとし生ける人、そのほとんどは皆"きみはいい子"なのです、愛を持って生きていけば。

だから、愛を主軸に考えれば、この映画はヴィオラ・デイヴィスが史上最凶の悪役であり、たった一人のヴィランでした。
だって、こいつの行動は誰かを思った上での行動なんて、皆無に等しいじゃない。

愛は人を変えてしまうし、狂わせてしまう。
それでも、僕たちが愛をやめないのは、僕たちがみんな狂ってるからなのさ!
それに、少し狂ってるくらいの方が可愛いって、ブーメラン野郎も言ってたじゃない。

「Her 世界でひとつの彼女」を思い出してほしい。
"恋愛は社会から受容された狂気"なんですよ。そこに、正義や悪を持ち込むこと自体がいけ好かない!
僕はこの映画を観て、どんな人を好きになってもかまわないと教えられたような気さえする。
本当にどうしようもなく愛してしまうのであれば、相手が人を殺してようがそんなモノ関係ないってくらいに。

途中、クネクネ魔女っ娘の策略で、もうひとつの人生の幻覚を見させられるシーンがある。
それは、彼らがやってしまったことへの後悔や、もしそれがなかったら、、、の"if"の幻覚なわけだけど、やっぱりそこにも愛だけが、愛だけがそこのみにて光輝いていた。
ハーレー・クインは、
"わたしのはウソじゃない"
と言った気持ちをわかってあげたいね、僕は。
たくさん後悔もするし、あの時あの瞬間に違った選択をしていたらどうだっただろう?なんて、いくらでも考えることはあるし、それにとらわれることもある。人生なんて、ifに想いを馳せる瞬間の連続だもの。
でも、それでも、最もifに囚われた男・ディアブロが叫ぶ

"過去は変えられない"

から、みんながそれぞれ、それぞれの生き方に納得と折り合いをつけ合いながら、今目の前にある自分だけの、自分なりの最大の愛を伝えようと生きていく姿に、僕は感動したし、なんなら覚悟も確信も得ることができました。

正しいことは、法律とか倫理とか普遍の外側にあって、自分の心の中にあるんじゃないの?

最初懸念してた、ウィル・スミスが良い子良い子しすぎて、映画の邪魔しやがったら、ウィルのスミスのフィギュア買い集めて、爆竹で爆破してやろう!とか思っていたけど、ネタフリが効き過ぎて、良い子し過ぎて逆にもうカッコよかった。
ウィル・スミスが、ウィル・スミスみたいな役をやることから逃げずにやったんだもん、偉いよね。続編があるなら、もうジェイデン出しちゃえよ。それでこそ、世界で最高のパパだぞ!

ご多分に漏れず、ハーレー・クインは最高のヒロインでした。

というわけで、ツッコミどころや文句のいいどころはたくさんあるけれど!(カタナガナゼ、普通にわしも行くわみたいにBARに行ったのか、マジで誰か説明してくれ)
それでも、僕にとっては刺さる特別な一本になりました。
てか、普通にカッコいい画がたくさんあったから、それでも満足できるし。

正義や悪の話が好きなら、言わせてくれ。

この件の間、バットマンは何してたんだ?
イタリアで茶でも飲んでたか?
あっ、それは別のやつか。

面白すぎなくてよかった映画っていうのは本当に存在するということがわかった。だって、面白すぎるとみんながみんな絶賛するんだもん。

この映画同様、みんなに嫌われながら、それでも一握りの人はしっかりと強く、狂ってるくらい愛されるスーサイド・スクワッドたちのラブストーリー、僕は愛してます。
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