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心が叫びたがってるんだ。のmのネタバレレビュー・内容・結末

心が叫びたがってるんだ。(2015年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

いくら夢見がちな小学生でもラブホが性的な所だという事はなんとなく分かるのではないか。小学生じゃなくて幼稚園児の発想に思える。日本アニメの性なのか、主人公の女の子の内面が最初から成長後まで終始幼すぎるのが気になった。

喋る卵は彼女の罪悪感のメタファーであり、終盤の名台詞「いないと、困るの!」で分かるように彼女が自分を救う為=逃げる為に作り出した存在、というのはよく分かるのだけど、やはりデフォルメし過ぎているし陳腐だとも感じた。あまりに分かりやすすぎる感はあるけど、アニメだからデフォルメしてなんぼなのか。終盤に卵が再登場してきた時には失望してしまった。

卵を筆頭に全体的に台詞で説明し過ぎ、デフォルメし過ぎで分かりやすくし過ぎている事に不満を抱いた。これは同じ監督・脚本家コンビの名作「とらドラ!」(よくある深夜アニメかと思いきや、複雑な心の機微を描いた青春群像劇の傑作)を観ているから抱いた不満なのかもしれない。あの時はできていたのに。

うまく喋ることができない人間の内面の葛藤をどう描くのかということには個人的に強い関心があって、この映画もどうやらそういう話だという事に観ながら気付くと俄然興味が湧いてきた。
吃音の人は歌だと吃らずに言葉が出てくる、という事は実際にあるから、吃音(この映画の場合は言語障害か)とミュージカルの組み合わせは良いと思う。

プロローグ後の成長した主人公の玄関から出てきた後の仕草の描き込みの細かさはアニメの良さがあって素晴らしかった。

クラスルームでミュージカルをやる事を提案するシーンで元野球エースが絡んできた時、男主人公がエースに「後輩君たちが可哀想だ」と勢いで言ってしまって、それに対してエースではなくて現キャプテンの方がキレて、それを見て現キャプテンの彼女が動揺する、という辺りの細かい脇キャラの感情の動きだったり、クライマックスでのメイク係の言動だったり、そういう細かい人物描写には「とらドラ!」にあった細やかさが垣間見えて良かった。主人公ではない人達の感情の細やかさ。

クライマックス、彼女がミュージカルの舞台に立つ前にラブホの廃墟で彼と2人だけで対峙する場面が『心のミュージカル』という感じで良かった。しかしこの場面で彼女がもっとエグい内面を吐露していればもっと良かったのでは、とも思っている。きっと彼女には、喋れなかった事で自分の中に溜まったもっと毒があったはずなのだから。
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