夜飯

心が叫びたがってるんだ。の夜飯のネタバレレビュー・内容・結末

心が叫びたがってるんだ。(2015年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

玉子なんていない!いる!いない!いないと困るの!(いないと困るの!の演技すごくよかった)
成瀬「〜全部めちゃくちゃになっちゃって!私のおしゃべりのせいじゃなかったら、なんのせいにすればいいかわからなくなっちゃうじゃない!」
「おしゃべりのせいにしなきゃわからない!」
成瀬のこの理由がわからない嫌なことを全ておしゃべりのせいにしてしまうの、わかるんだよなぁ。何か一つ自分のなにかのせいにして考えるのをやめることが自分を守る方法なんだよね。他人ではなく自分が悪いと思った方が楽に物事が収まる。そのきっかけが成瀬は幼少期の父親の不倫による離婚…。不倫なんて幼少期分からないだろうし、両親からの「お前のおしゃべりのせい」って言葉しか離婚の原因がわからないの本当に苦しいな…。成瀬があれだけ葛藤して悩んで苦しんで、劇当日逃げてしまうのも本当に分かりすぎて苦しかった。とんとん拍子で行かないところに成瀬の進み方が現れてたと思う。

坂上、目の前の正義感だけで向き合って、「声がかわいい」とか「もっと声聞かせて」とか仁藤が好きなくせして何言ってんだこいつでしたね… は…??ですよ。ったくもう。坂上も仁藤もオーバーキルすぎる。まあこういう人わりといるから変にリアルだったね。自分が思う正しいことをしようとしてるけど、その「正しい」物差しが未熟なあまり、すごく傷つけられる人が出るというか。嫌いではないけど美味しいところだけ美味しく持っていくタイプの人間で、住む世界が違うな〜って感じてキツかった。成瀬可哀想ともちょっと違う。単純にキツい。

ミュージカルには奇跡がつきもんだろ?の先生がかっこよすぎる〜〜〜〜〜〜!!分かっているようで別にわかってない、分かってないようで実は察してくれているって加減がとてもいい大人だった。

私の声さようなら あの山の先の ふかくねむる湖に行ってしまった
私の声消えたこと みんな喜んだ みんな私の言葉を嫌ってるから
すんげぇこの歌詞無理。ボロボロに泣いてしまった。ここまで通してずっと成瀬が抱えてた問題をすごく引いた目で歌ってるというか。落ち着いたトーンで堂々と歌い上げる成瀬が、今までの成瀬を客観的に見てるようで。なんか、上手く言えないけど、死んだ自分を見てる自分みたいな感じ。
お母さんの立場なら本当にこれは聞いてられない。死んだ成瀬を見る成瀬の歌に聞こえるっていうのは、お母さんが殺したって暗に言ってるからなのもある。私が喋らないことをお母さんは望んでいるんでしょう?喋らないでうれしいでしょ?って聞こえる。お母さん、追い詰められてて成瀬と上手く向き合えなかったところが大きいので、すごくいたたまれなくなってしまった。でもここで気づけるお母さんでよかったね。子供にこんな歌詞を歌わせてしまった、って泣けて良かったなぁと思った。
逆に成瀬が話せなくなった元凶であるお父さんは聞いても気づけないんだろうなとも思ったり…。成瀬が注意されたおしゃべりって特別おしゃべりというよりも、年相応のあったことや見たこと聞いたことを人に話したくなる衝動なだけだと思ったし(回想見る限り)。お城にお父さんが行くってなったらそりゃあ話すよ。それをお前のせいだよと娘相手に言える人間性……。あのシーンはゾッとしたし、人の心がないです。

田崎くん話を通して、真っ直ぐで純粋でとても人間くさくてよかった。嫌味がないというか、人との向き合い方がよかったね。優等生でもないし、いい子でもないけど。自分が見ていいと思ったことに対して真っ直ぐに行けるところが素敵。野球部の後輩とのズレから機嫌が悪かったり、上手くいかないもんはいかねぇ!みたいな考えに囚われたり、田崎くんの歯がゆさがわかるので、坂上が嫌味のように言った時は肝が冷えたよね。坂上ほんとお前…お前は自分の正義に酔すぎだよ…怖いよ…。
劇に間に合うかどうかのシーンで自分も探しに行きたい連れ戻したい気持ち強いのに舞台で待ち続けて、連絡に過剰に反応してしまうの良すぎる…。歌いながら成瀬が正面から歩いてくるところ、坂上と目配せしたのもよかったねぇ。
思ったけど舞台上の最後の並びは伏線だったのかな?普通は成瀬と坂上並べると思うから違和感あった。最後の告白で納得したけど。
なにはともあれ、良い青春映画。見て損はないと思う。
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