Eike

プロジェクト・アルマナックのEikeのレビュー・感想・評価

3.0
爆破シーンなどド派手な演出が売りであるマイケル・ベイ製作のタイム・トラベルSF。
監督のDean Israelite氏にとっては長編デビュー作らしく、出演者も知名度の低い若手のアンサンブルで、それもあってこぢんまりとしたSF作の印象が強い作品です。

MIT進学を目指す秀才のデビッドが屋根裏で見つけた古いビデオカメラ。
そこに入っていたテープを確認してみると映っていたのは自分の7歳の誕生パーティーの模様。
問題はその中で鏡に一瞬映りこんでいた現在の自分の姿を見つけてしまったこと。
今は亡き父の地下の作業室で見つけた謎の装置、その秘密を解いた時、デビッドと彼の友人たちは時空を超えた事件に巻き込まれてしまうのだが…

何時の時代もタイム・トラベルジャンルの人気は「鉄板」。
本作、高校生が主人公とあって青春映画のテイストも濃いのですが主役のJonny Westonは撮影時点で27歳だったらしく、若干の違和感が...。
若者を主人公としたタイムトラベルジャンルの作品として考え付くアイデアは一通り盛り込まれています。
その点で基本に忠実で安定感が感じられる作品と言えますが、その反面、これ、という特色と言うか決め手を欠く印象の作品であるのも事実。
時間旅行のデバイスの完成までの描写が結構詳細だったりするあたりはSFらしさもあって面白いのですが、多くの観客が望むものはやはりそこではないでしょう。
後半にかけてのタイムパラドクスによるツイストの描写も思いの外あっさりとしていて主人公の苦悩に迫真性が今ひとつ感じられず、サスペンスが高まらないのは、ちと辛い。
まぁ、それでも一応広げた風呂敷は畳んでくれているのでまとまりは悪くないと思いましたが。

実は本作について不満を感じたは、そのスタイル。
ほぼ全編POVとファウンドフッテージ形式なのです。
ドキュメントタッチを狙う意味で冒頭から中盤辺りまでは理解できるのだが、全編を通して採用するなら観客に納得がいく設定を用意してもらえないと付き合うのが次第に辛くなってきます。
何となくPOVがドキュメントタッチの創出目的ではなく、プロットやアイデアのもの足りなさをカバーする手段のように見えてきてしまいいます。
SFテイスト、サスペンス、青春ドラマといった要素が一通り盛り込まれてはいますが、この形式のおかげで描けない部分が多くなってしまっていて、結果としてちょっとずつ物足りず、印象が弱くなってしまっている気がします。

やっぱりPOV形式というのは簡単そうに見えて、実はじっくりと仕込みが出来ていないと効果が出ないフォーマットなのだ。
Eike

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