登場人物たちがやりとりを行う、実在するネットのアングラ【ダークウェブ】を
『荒れた地下鉄内で素性の知れない人間たちが、仮面舞踏会のようにマスクで身分を隠し交流する無秩序なコミュニティ』
という映像で表現していてそれがとても好みだった。
一般人には未知の世界であるハッキング表現は
エンタメ方面の「ハッカーがミサイル基地を乗っ取った」的なお笑い感か
リアル志向の「白黒文字がスクロールしていくだけ」の退屈ハッカーのどっちかになりがちだけど
今作は現実のキーボードカタカタ、やり取り自体は仮面舞踏会での怪しい会話にしている。
その交流もチャットのウィンドウが顔の横にポップアップするし、パスコードなどは手渡しの工具という、比喩の塩加減が丁度いい。
ハッカー達がマスク姿で笑い罵ってくるから、パソコンぶっ叩いて「騙しやがった!あの野郎!」と怒っても馬鹿っぽさを感じづらく良い。
作中のハッカーたちがやってることも
ハリウッドセレブの私的な写真や、政府団体の汚職とスキャンダルを盗み見
時にはかすめ取って暴露して事件になっている現実のハッカーと照らし合わせているし
そのハッキング侵入の初歩も
実際問題になっているEメールのフィッシング詐欺や、怪しいフリーWi-Fi、物理的にシュレッダーにかけていない個人文書など
気を付けないと、と思う程度には現実的。
カメラワークも様々で絵はすごく楽しかった。
ストーリー展開をわざと胡散臭くしてるので鑑賞中色んなシミュレーションが絶えず
騙されたー!というより、カラクリに対する「なるほどね」が勝ってしまった。
『手品のタネを知ってしまうとつまらない、人は見たいものしか見ない』
というのはまさにその通りなんだけど。
この作品に限らず『衝撃のラスト!あなたは見破れるか!』という宣伝文句は諸刃の剣だなとまた改めて思った作品でした。
ハリウッドリメイクでどう味付けし直すのかは楽しみにしてます。