ワシ

踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望のワシのネタバレレビュー・内容・結末

2.0

このレビューはネタバレを含みます

『踊る大捜査線』の過去の劇場版作品を全て観る。
今回はシリーズ6作目で、『踊る』本編劇場版では4作目の『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』を観る。

タイトルに“ファイナル”とあるように、この作品でひとまず『踊る』の劇場版は終了。
そして今年再始動するするまで12年の休止となる。
ちなみに本作は初見。

湾岸署管内で起きた射殺事件の捜査の過程で、6年前に起きた誘拐事件に関わりがあることがわかる。
それを快く思わない警察幹部たちが事件の隠蔽を図る中、青島たち所轄刑事たちが真相に迫っていく物語。

作品冒頭は、ちょっと変わった張り込み風景。
『踊る』シリーズを通じてずっと微妙なまま進展のない、青島とすみれの関係を踏まえた“もしも”のシチュエーションの寸劇といった感じだ。

恒例の湾岸署内のコミカルなくだりの一方で、『踊る』の主要キャスト・恩田すみれが退職を願い出る。
突然の主要メンバー退職は衝撃だが、その前の場面で威勢よく取り調べを行ってたすみれが、直後に体調不良を理由に退職という展開は違和感を覚えた。

警察幹部たちの主導による捜査が進められる中、犯人のでっち上げが行われ、青島は本部が何かを隠してると気付く。
また所轄署内では、手違いにより大量に購入されたビールの隠蔽が行われる。
こうした硬軟織り交ぜた展開の中に、退職を決めたすみれの姿は無く、それが印象付けの為とは言え、作中での彼女の冷遇ぶりは寂しく感じた。

早い段階で容疑者としてマークされてたにも関わらず、久瀬が自由に動いてるのはなぜなのか?
そして青島や室井が詰め腹を切らされる展開は、さすがに無茶な気がした。
そんな気になる点もありつつ、次第に物語はシリアスさを増していくが、捜査に政治が関わる様子は既視感があり、『相棒』に似た雰囲気を感じた。

そうこうしてるうち、真下の息子が久瀬に誘拐されてしまう。
青島は警察手帳を剥奪されてしまうが、捜査本部長として現場復帰した室井の配慮で、久瀬の行方を追い始める。
一方、すみれは仲間たちに内緒のまま、ひっそりと湾岸署を後にする。

今は亡き和久の捜査手法をなぞり、久瀬の行方を突き止めていく青島。
しかしその姿は、何かの特殊能力でも使ってるかのように見えた。

青島というと、ドラマの頃は無鉄砲な熱血漢ながら、既存の刑事ドラマには見られないひと味違ったキャラとして描かれてたと思う。
しかし『踊る3』や本作の青島は、昔の刑事ドラマの普通の熱血刑事っぽく見えたなぁ。
それと“頑張ってる感”を醸すための演出が、すごく気になってしまった。

紆余曲折を経た挙句、久瀬の居所が「バナナ」って何なん?
『踊る2』のときの「洋ナシ」もなかなか苦しかったが、それ以上の意味不明さにポカーンとなってしまった。
そして物語は衝撃の結末へと向かっていく。

作品ファンの間で物議を呼んだという、すみれがバスから現れるシーン。
噂には聞いていたが、思ってた以上に露骨な表現で驚いてしまった。

あのシーンには生存説と死亡説があるそうだが、あんなにあからさまだと死亡説が有力に思えるね。
まるでそれは『踊る』シリーズを完全に終わらす“トドメの一撃”のよう。
そしてシリーズを通して視聴者をヤキモキさせた青島とすみれの微妙な関係にも、ハッキリとケリをつける意味合いがあったんじゃないだろうか。

警察組織改革委員会のシーンなどは蛇足な気がした。
室井の“和久さんオチ”で終わってた方がスッキリしたんじゃない?

つまらないっていうか…なんだコレ?って感じ。
すみれの安否をはじめ、スッキリしなくてモヤモヤ感が残る作品だった。

すみれを犠牲にするような終わらせ方は、どうも『踊る』らしくない気がした。
むしろお祭り騒ぎしてパーッと終わった方が、『踊る』っぽいんじゃないかな(もちろん異論はあると思うけど)

そういう意味だと、過去のキャラまで総動員して、お祭りっぽい感じだった『踊る3』で終わっても良かったんじゃないかい?
『踊る3』って、見方によっては同窓会みたいな雰囲気あったもんね。
でもそれじゃ良くないという判断だったんだんだね。

そして本作『踊る4』はシリーズ終了のための作品で、様々な物事にケリをつけなきゃならなかったんだろう。
そのために、青島や室井が目指してた警察組織改革の実現をゴールに設定して、そこから逆算して作られたんじゃないかと思った。

だとすると、警察改革を行うという結末のため、そのキッカケになる会議室の面々の不正の物語にしなくてはならなかった。
その大きな流れに沿いつつ、多数の登場人物をまんべんなくなぞっていくよう気を配りながら、枝葉のエピソードが付け足されていったんだろう。

そんな中で恩田すみれは、シリーズ終了のイメージをひとりで背負わされたということだろうか?
なにはともあれ、全く根拠はないんだけど、そんな大人の難しい事情を感じさせる作品だった。

これで終わりなら「新たなる希望」という副題が、意味不明な気がするなぁ…。
いいや、この副題は、いつの日かシリーズが再始動するかも知れない含みを持たせたものだったのか!?

最後に、噂によると今回再始動の作品の中で、すみれが生きてるような事が語られてるそうだね。
それじゃあ、あのバスのシーンは何だったんだよ?

追記。
12月4日に、織田裕二演じる青島刑事が登場する『踊る大捜査線』の新作が制作されることが発表された。
いよいよ登場の『踊る』本編は、どんな内容になるんだろね?
そして、恩田すみれの登場はあるんだろうか?

余談。
本作では元一世風靡セピアの武野功雄も登場。
調べたら、彼はドラマ版にもちょいちょい出てたし、SPドラマには春海四方も出てたんだね。
もしかして『踊る』シリーズでは、密かに一世風靡セピアがネタにされてたのか?(考えすぎ)
ワシ

ワシ