雇われ店長として男が1人で切り盛りするどら焼き屋に、ある日突然、働きたいという老女がやってくるドラマ映画。
まず樹木希林と永瀬正敏の演技が半端ない。台詞を台詞と感じさせないこの2人だからこそ作れる空気感がとにかく素晴らしかった。
日常会話のトーンを崩さないからこそ、少し既視感のある設定だったけど、違和感のない説得力が生まれていたように思う。
樹木希林演じる老女の何気ない言葉も、ストーリーが進むにつれて、後から解像度を増して刺さってくるから、終盤は何度も泣きそうになった。
彼女の生きた人生に思いを馳せれば馳せるほどに、映像を通して、店長とおんなじ感情を共有してるような気持ちになっていく。
一方で、お店のオーナーや、その甥だったりを分かりやすい世間として描きすぎてるような気もした。ああいう役回りも必要だと思ったうえで、もうちょっと自然に物語りに入ってきてほしかったなあ、とは少し思ったかもしれない。
とはいえ、全体を包む空気感は素晴らしく、気付いたらすぐ偏見にまみれてしまいそうになる、自分の生き方も静かに見直すことができた。素晴らしい映画でした。
