俄マン

バケモノの子の俄マンのネタバレレビュー・内容・結末

バケモノの子(2015年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

誰が観ても楽しめる作品だが、
毎日が楽しい!という人よりも周りの環境に馴染めかったり、今の自分のことが好きになれなかったりと何か勇気づけてもらいたい、背中を押してもらいたいという人によりオススメしたい。

時をかける少女(2006)、サマーウォーズ(2009)、おおかみこどもの雨と雪(2012)を手掛けた細田守監督の作品。

現実社会をベースに展開されるファンタジーな世界観を様々な視点で描写し、私たちがただ知らない見えてないだけで、実在しているのかもしれないパラレルワールドの存在をより身近に感じさせてくれる。

今回のテーマは心の中に生まれる『闇』

主人公の9歳の少年(蓮)は、母親を交通事故で亡くし、父親は失踪、1人で生きていかなねればならないという人生のどん底からストーリーは始まる。独りぼっちになった少年のところに、ある日"くまてつ"という異世界人が現れ、その出会いをきっかけに肉体的にも精神的にも成長していく。

少年から青年へと変化していく中で季節の移り変わりや声優を変えることで声変わりを演出したりと時間経過の仕掛けが実に面白く、映像として私はベストキットを観ているような感覚があった。

様々な出会いを通じて大きく成長した主人公は、自分が1人ではないことに気づき、自分の過去や闇とも向き合い、強い信念(胸の中の剣)を手に入れ、やがては周りの人を闇から救い出すほどの立派な青年になった。


どんな人にも辛い過去や悲しい思い出が必ずあるし、目を逸らしたくもなる。臭いものには蓋をするという諺があるように一時的な対処法には効果があるかもしれないが、根本的には何も変わっていない。生まれた時代や場所、家庭環境を変えることは出来なくても、それを理解した上で自分の選択や意味づけを変えるだけで人生は面白い方に転がっていく。
 昨年は、誰もが知るような芸能人のショッキングな出来事がありました。どんなに笑顔な人でも必ずどこかには闇を抱えているし、いつその闇に落ちてしまうかわかりません。その事実を知らなくても寄り添う気持ちや思いやる心を持って接することができれば、違う結果になっていたかもしれません。だからこそ自分の家族や周りの友人たち、自分を含めて大事にしてるつもりだけど、つもりではなくちゃんと形にしていきたいと思い、この映画を見終わった後に連絡してみました。みんな元気そうで良かったです。

色々伝えたいことが多すぎて長くなりましたが、学校では教えてくれない人生の本質について考えさせられるような作品でした。否定するのではなく、まずは認めてあげて歩みよること。完璧を求めない。赤子の成長を見守るようにちょっとずつ。この映画に出てくるうさぎの宗師みたいなおじいちゃんになりたいですね。
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