MasaichiYaguchi

バケモノの子のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

バケモノの子(2015年製作の映画)
4.4
「時をかける少女」、「サマーウォーズ」、「おおかみこどもの雨と雪」と、ほぼ3年おきに優れた作品を発表している細田守監督だが、満を持して間もなく公開される本作品もファンの期待を裏切らない。
役所広司さん、宮崎あおいさん、染谷将太さん、大泉洋さん、リリー・フランキーさん、広瀬すずさんという今の日本映画界を代表する俳優たちが声優を務めて繰り広げられるのは「新冒険活劇」。
バトルを中心としたファンタジー活劇物であるが、そこには師弟愛や親子の絆、淡い恋というエモーショナルなドラマもあって心の琴線に触れる。
人々が住むリアルな「渋谷」と熊徹らバケモノたちが住む「渋天街」という二つの世界を舞台にストーリーが展開していくが、「渋谷」と「渋天街」のようにポジとネガ、陰と陽のような対照的な二つのものが幾つか登場する。
人とバケモノ、熊徹とライバルの猪王山、九太と終盤で対峙するある人物、熊徹と九太の実の親、そして諍いの絶えない九太と熊徹。
これら対照的な二つの存在は全く異なっているようでいて、背中合わせの裏表のような関係で、その関係性が物語に奥行や広がりを与えている。
そしてこの裏表の関係の二つのものが終盤で対峙し、そしてある時は火花を散らし、ある時は痛みを伴いながら交わっていく。
細田監督は終盤のこのシークエンスをドラマチックに描いていて心を揺さぶる。
性別も年代も問わず、幅広い層を魅了するであろう本作品は、Mr.Childrenが歌う主題歌「Starting Over」が流れるエンドロールに至るまで我々のハートを熱くする。