ぐっち

怒りのぐっちのレビュー・感想・評価

怒り(2016年製作の映画)
3.5
原作を読んでからの映画鑑賞でした。
3つのストーリーを違和感なくまとめることなんてできるのか、
またどうせ詰め込みすぎな形に終わるのでは…と鑑賞前は期待より不安の方が大きかったのですが、
見事に3つのストーリーを同時進行で追いかけ終結させてあったと思います。
李相日監督の編集力の高さが伺えます。
そりゃ小説には文字で登場人物の心情や状況が事細かに書かれているので映画より詳しいのは当然だと思うのですが、
この作品はその細かい描写を補う役者の方たちの演技が光っていたように感じました。

渡辺謙さんの娘を想う背中
宮﨑あおいさんの後悔の叫び
松山ケンイチさんの佇まい
広瀬すずちゃんの嘆き
妻夫木聡さんと綾野剛さんの愛情
佐久本宝くんの悲しみと衝動
森山未來さんの不気味さ

記憶に残る演技でした。
宮﨑あおいさんの愛子という役は吉高由里子さんがやるとハマる様な口調の喋りだったと思うのですが、
漁業の田舎町の娘という雰囲気なら宮﨑あおいだし、
また宮﨑さんもそんな口調を研究したんだろうなという感じに話し方を工夫されていてさすがです。
また、東京のカップルのシーンは雰囲気がまさに付き合いたてのカップルで、
何気ない会話だけで愛を感じる絶妙な空気感が出ていてびっくり。
空気はカメラに映るんだと驚きました。
普通のラブストーリー物もこれくらいの愛情を見せつけて欲しいものです。

他の映画では役者自身をじっくり撮るというのが少ない気がするのですが、
恐らくこの映画は役者を追って撮ってるのかななんて考えていたら、
監督がまさに映画は役者のモノと発言されていたので納得しました。

ストーリーも演技も様々な衝撃があると思うので、この作品は一見の価値あり。
何より演技。
日本の30代若手俳優は捨てたもんじゃないと初めて思った。
じっくり登場人物個々の描写を吟味して欲しいです。
ぐっち

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