垂直落下式サミング

信長協奏曲の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

信長協奏曲(2015年製作の映画)
2.5
公開時に立ち読みしたキネマ旬報のコラム欄にボロカスに書かれていたのが記憶に残る。けっこう棘のある批評家の方の意見だったので、「お前らさすがに言い過ぎだろ。小栗旬主演の人気ドラマだぞ?」と思いつつも何となく地雷臭がして劇場には観に行かなかった映画。
同時期には『キャロル』とか『オデッセイ』とかやってましたから、そもそも優先度低めだったんですけどね。でも僕自身はドラマ版そんなに悪くない派だし、否定的な意見を読むのはあんまりいい気分じゃなかったんですよ。キムタクとか織田裕二が演じるようなチャラくて泥臭い主人公の人物造形が懐かしかったし、衣装美術も良い仕事していたと思う。毎週わりと面白く観てた口ではあるんですよね~。サブローのキャラは漫画よりドラマ版の方が好青年で好きだったりします。
なんですけど…、観賞後はキネ旬に書かれていたコラム内容に概ね共感してしまっている自分がいた。誰の批評かは忘れましたが「情緒も風情も何もない紙芝居」っていうパンチラインの強いフレーズが印象に残っていて、いざ観てみるとまさにそんな映画でびっくり。実に的を射た批評文だと思う。プロの批評家ってどんな作品に対しても真摯に向き合っていて偉いんだなぁと改めて感じた次第です。
こういう作品の不出来なところを具体的にあげつらっても面白いんでしょうけど、テレビドラマ版は好きなのでやめときます。合戦シーンは人が多くてよかったですよ。あそこは大画面でみたいかなぁ。
あえてツッコミを入れるとするなら、脚本家の意向で「原作の漫画的な要素を取り払って実写的な表現に改変した」らしいんだけど、じゃあなぜわざわざ映画的でない冗長ゼリフを付け足したの?これ言っちゃうと身も蓋もないんだけど…やっぱり時代劇やトレンディドラマが世代的な価値観の齟齬から衰退していったように、既に月9的なチャラい物語は時代遅れで徐々に滅んでいく定めなのかもしれない。それはそれで悲しい。