青二歳

いばら姫またはねむり姫の青二歳のネタバレレビュー・内容・結末

いばら姫またはねむり姫(1990年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

岸田今日子原作の“眠れる森の美女”。川本喜八郎がチェコのトルンカ工房と共同製作した大人のメルヒェン人形劇。岸田今日子のナレーションがそのエロティシズムを格調高く仕上げ、隙のない世界観を構築する。
岸田今日子にこんなキャリアがあったとは。参った。

子供の頃“残酷なグリム童話”という本が流行りましたが…とうに岸田今日子が書いていたのね。しかもこちらの方がよほどグロテスクで、少女ならではの残酷さが美しい。このエロティシズムは圧倒される。
15歳の誕生日を迎えた姫のベッドシーン…ロリは好かないが、この美しい人形劇が描く性には、男が搾取する余地はない。少女の性の倒錯と聖性をここまで容赦なく描くのは女にしか出来ないのだろうか。(その意味に限って言えば、山岸凉子が好きな方にはハマると思います。)

まずカラボス(姫に呪いをかける仙女)がまさかの男だもんな…しかも義足。一筋縄でいかないようだぞ…と警戒するも、バレエではカラボスは"足が不自由な老婆"という演出も多いので、この男はあくまでカラボスなのだろうと思い直す。しかし容赦なく間の抜けたツラの“広報大臣”とかいう男が事の顛末を発表したという…まさか仙女は出てこないのか…?もうこの時点でだいぶお手上げなんだけど、一応紡ぎ車が出てきたので、王道に戻るかと思うじゃない…そしたらまさかの日記からのあの展開。

さらにいえば、途中までは見事“少女の世界”もので、厳格でヒリヒリとした質感なのに、少女から大人になった女はこうも変わっていくのか…後半は艶笑譚のような、余裕のある鷹揚な空気感になっていく。この締め方でヤラレターとなりました。少女の性の聖性をこうまで描きながら、通俗な女のしたたかさでピシャリと来る。途中までで終わらせていればロリコン男に絶賛される作品になっていたかもしれないが、そんな甘っちょろいもんではないのだ。
青二歳

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