垂直落下式サミング

秘密 THE TOP SECRETの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

秘密 THE TOP SECRET(2016年製作の映画)
2.2
警察の特殊捜査チームが、連鎖する猟奇事件の真相を追う怪奇SFミステリー。『プラチナデータ』とか『マイノリティリポート』みたいな未来の犯罪捜査を描くSFサスペンスで、捜査チームは死者の脳に残された過去の記憶を映像化する技術「スキャナー」を用いて、ある怪奇事件の真相に迫っていく。
『るろうに剣心』の大友監督という事で上映時間2時間30分と長尺にも関わらず展開が早く飽きずに見られた。演出・美術等スタイリッシュでオサレな絵作りが印象的だが、少女漫画の実写化にしてはやや男臭いように思える。
本作における重要な技術である「スキャナー」ですが、事件捜査という名目で死者の脳を当事者の視点で覗き見られて、記憶や感情まで知られてしまうのはかなわないなぁ…と。友好関係や個人的趣向まで、事件に関連する記憶以外にも本人しか知り得ない情報を色々と見られちゃうわけですからね。この技術を悪用すれば、自分が殺した被害者の脳を覗いて興奮する新しい形のネクロフィリアが生まれるかも?と…かなり想像の膨らむSF設定であります。

正直な感想を言うと、ポスターアートに味のある顔面が一人も映っていない時点でお察しというか…。流行りの顔の美男美女や渋いおじ様ばかりが登場する代わり映えのしない映画になってしまっている。そういう映画が悪いって言ってるんじゃなくて、そのフィクショナルな世界観で韓国映画風のエグい描写をされても観客は困惑するだけで、むしろ物語の説得力が減退してしまうのだ。この手のサイコスリラーとは非常に食い合わせの悪いキャスティングといえる。
演技とか演出も場面場面は悪くないんですけど、挟み込まれる変にウェットな要素が作劇の邪魔をしちゃう感じ。それに、キャラクターが思っていることを全部言葉にして喚き散らす演技はどんな名優が演じても滑稽に映るだけだからやめてほしい。それまで丁寧に積み上げてきた重苦しい空気感が陳腐な感情吐露描写のせいで台無しだ。
お話についても、目一杯広げた大風呂敷をキッチリ折れ目どうりには畳めていなくて消化不良な部分が目立ち、タイトルにもなっている重大な「秘密」もサスペンスには繋がってこないため映画に奥行きが感じられない。最初に用意されていた巨大な大仕掛けが物語の途中からどんどん作者の手に余ってきて、終盤にはグッズグズに崩れていくのは、原作が連載漫画故か?だとしたら、そんな弱点までトレースしなくていいのに。
スタイリッシュでエッジの利いた映像には製作陣の確かな手腕とこだわりを見受けられるので、絵的なセンスを示すのなら100分くらいのタイトな映画にしてほしい。