【金さえあればなんでもできる】
邦題の光ってナニ?と首傾げつつ劇場行きましたが、やっぱねーじゃん光(笑)。
あ、ナルコ・コリードを歌い成り上がる歌手のこと?でも殺すために虫を呼び寄せる光と同じだから、それも闇でしょう。
メキシコの麻薬戦争を追う、み応えあるドキュメントでしたが、これでもユルいのでしょうね。特定の麻薬カルテルは攻撃していないし。
概ね予想通りの内容でしたが、堂に入った腐りぶりでしたよメキシコは。腐敗暮らしに溺れ最早、自分が腐っていることも忘れたような面々。
例えば『ゴッドファーザー』が描いた抗争を架空の娯楽でなく、現実の生活で楽しんでしまっている感覚。麻薬ギャングの追っかけまがいをやってる女の子なども出てきます。バカですが、赤信号皆で渡れば怖くない、の域にイッチャってるのでしょうね。
90年代のカルロス・サリナス政権が新自由主義政策にシフトした結果、麻薬ビジネスの拡大と、そこに流れ込む大量の失業者を生んだ、というのが大枠の流れとしてあるようですが、そこから麻薬ベンチャー?の群雄割拠が始まったのでしょう。
食うためにそうするしかなかった人たちも沢山いたでしょうが、本作に描かれるのは、麻薬王となることが夢となる世界が何を生むか、ということ。
さすがに驚いたのは、成功者の巨大な墓地群ですね。
当然の帰結として、麻薬戦争で名を上げれば短命になります。いずれ殺されるから。
で、権威を残すため城のような墓を「建て」るんですね。映画スターみたいな自分の写真もベタベタ貼って。まさにバカの城にしか見えませんが。メキシコの恥だと思ったけれど、麻薬で豊かになった面も無視できないのでしょうね。
実態を物語風に時系列で知る、という点ではよい映画でした。これを見たからって何も変わらないけどね。でも少し寒気がしたのは、麻薬界で成功を目指す、ある男が「金さえあればなんでもできる」と言っていたこと。
これ本気らしいし、そう錯覚させてしまう世界にいるのだろうけど、日本もこういう価値観の人が随分増えていると思う。人殺しをしないだけで中身は大して変わらない、となれば日本だってメキシコを笑えない。少なくとも自分は麻痺しないようにせんとね。
報復結果としてのバラバラ死体もちゃんと出てきましたが、驚きはなかった。
麻薬戦争だけでなくフェミサイドでもメキシコは先進国ですが、女の子の手足を切り取りダルマに変えるという、都市伝説みたいなことを実際にやっている写真を見ていたので。このまま麻痺が進めば、女性殺しを讃えるようなコリードも出てくるんじゃないだろうか?
<2015.5.18記>