Osamu

皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇のOsamuのレビュー・感想・評価

3.7
麻薬カルテルに乗っ取られた街を映すドキュメンタリー。

アメリカとの国境の街、メキシコのフアレス。

麻薬カルテルの邪魔になる者は容赦無く殺される。見せしめのためにその動画がインターネットに上げられる。警察は表向きは動いているように見えるけど、買収されていて捜査は全く進まない。

いやぁ、こんな街が本当にあるんだあ、というのが率直な感想です。呑気過ぎる感想でごめんなさい。でも、現実としてなかなか受け容れ難いものがあります。バイオレンス映画かアクション映画の「お話し」のベタな設定そのまんまなんですもの。街を救う英雄が現れるんじゃないかと条件反射的に期待してしまいます。

でも、英雄も現れなければ、街が救われることもありません。

生々しい死体の映像が、バンバン映ります。比喩ではなく、本当に血の海が現れます。

国境のフェンスを挟んでこの街に隣接するアメリカの街エルパソでは、こんなことが起きていることも知らずに市民は穏やかな日々を過ごしています。フェンスというボーダーラインのこちら側から、あちら側を実感するのは難しいようです。でも、現実として存在している…。

国境の街で麻薬カルテルが繁栄しているのは、国境の向こう側に麻薬を受け容れる大きな口があるからでしょう。本当は「知らない」とは言えない関係があるはずです。安全地帯にいると人間の想像力は鈍ってしまうのでしょうか。

これまで、ドキュメンタリーをいろいろ観てきましたが、こんなに現実を現実として受けとめられないのは初めてです。それ程までにヒドイ。

5月に公開される『カルテル・ランド』では、一般市民が麻薬カルテルに立ち向かうようですが、相当ヒドイことになるのではないでしょうか。『ボーダーライン』も観たいし、メキシコ・麻薬カルテルが今、僕のホットワードです。
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