マーくんパパ

恋人たちのマーくんパパのレビュー・感想・評価

恋人たち(2015年製作の映画)
3.9
程度の差こそあれ愛しい相手を失い傷つく3組の恋人たちの群像ドラマ。通り魔殺人で妻を失ったアツシ(篠原篤)、一見優しい肉屋の男に惹かれる倦怠期の主婦瞳子(成嶋瞳子)、学生時代から心に想い続ける友人がいるゲイのエリート弁護士四ノ宮(池田良)。一番身近な存在は瞳子、雅子様御成婚にときめいた青春の日も遠く、弁当屋で働きながら愛の冷めた夫姑との侘しい暮らしに訪れた恋の機会に色めき立ち、売り付けられた美女水(只の水道水)アチコチつけて着飾る切ない乙女心のデートの先は男が脱サラ目指す糞尿まみれの養鶏場、コレも金目的とわかり儚い恋心は砕け散る。見かけは優しいスマート弁護士、ヒステリー女や金にならない弁護には興味のない冷たい男、ゲイ友との別れもクールに対応する男が想い続けた友人からの誤解に基づく交友拒絶に心が崩壊する。一番熱く激しく同情するのがアツシ、もう会えない妻を想い続け犯人の極刑を望むも叶わず賠償請求で責任取らせたいと四ノ宮に詰め寄るも時間の無駄とあしらわれ、橋脚点検の仕事の稼ぎも全て訴訟に使い役所では国保未払いで冷たくされる。そんなアツシを学生運動で片腕なくした上司が弁当(瞳子の会社で作られた弁当)提げて慰めるが、それでもやり切れなくて死んでしまおうと覚醒剤買っても中身はカルキの偽物で又騙されカミソリ握るも死にきれない。どんなに想いを込めても報われずに苦しむ裸の人間を描いた2015 年キネ旬1位の秀作。最後にそれぞれ微かな希望の光が差し込み終わる所が救われました。