ハレルヤ

独裁者と小さな孫のハレルヤのレビュー・感想・評価

独裁者と小さな孫(2014年製作の映画)
3.9
独裁国家で大統領として君臨する主人公の年老いた男。クーデターが発生した事で孫と共に追われる身となる。逃亡する先で自らが引き起こした国の非情な現実を知るドラマ。

パッケージの孫が可愛らしいので、ちょっとは心温まるような作風かもと思っていましたが、見事に真逆でしたね。想像してたよりかなり重苦しい内容の作品でした。

前半の公用車に乗って逃亡を図る場面のスリリングさはかなりの緊張感。四方八方を群集に取り囲まれて、あまりの数に護衛も次々と逃げ出す事態。この辺りだけでも十分圧巻でした。

懸賞金をかけられて逃亡生活を送る事になった大統領と孫。その行く先々で目にするのは暴力の嵐。反体制の軍人による略奪や強姦、女性や子供も見境無く殺害される残酷な実態。そして自分の命令で殺した人々の家族。

窮地に追い込まれて初めて知る自分の国の事実。そして自分自身を悔いる大統領。そんな一連を何も知らない幼い孫の目線がしっかりと捉えています。とにかく生々しい描写が多くてあの孫役の子、撮影の時トラウマになってないか心配するほど。特にラストなんか大の大人でも見てて苦しかったし。

放漫な身分から現実を知っていく大統領の心の変化を描いた作品。その一方で本作での出来事は特定の国だけでなく、世界のどこでも起こり得るというのを示唆しています。監督自身もそれを意識して製作したみたいですね。

メッセージ的にも映画的な見せ方もかなりの巧さを感じた作品でした。精神的にかなりしんどくなりますが、間違いなく見る人の心に突き刺さると思います。
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