ゆきの

独裁者と小さな孫のゆきののレビュー・感想・評価

独裁者と小さな孫(2014年製作の映画)
5.0
2015年ベストインディペンデントムービー
になりました。
『独裁者と小さな孫』というちぐはぐした題名からはとても伝えきれない重いけれど私たちが見逃してはならない問題を語りかけてくる。
そしてその雰囲気は淡々とした調子で柔らかく独裁者の逃亡劇がどこか滑稽に見えてクスっとくる。

どこかの国という設定はどの国でも起こりうる、そして今現実として起きている国も含まれており、日本も全くの例外ではない。
大統領の部屋から見える街並みは煌びやかで決して貧しい国には見えない。
しかし彼はそこだけしか見なかった。
国民を思いやらなかったツケが回ったのか、一夜にして国民のクーデターが起きる。
「変装ゲーム」と称した逃亡劇の中で、彼らは1日の稼ぎが儘ならず食糧さえ買えない国民や、炭鉱で子供までも働かされている現実、そしてこの騒動も「大統領のせいだ」と嘆く国民たちの中に身を置く事になる。
怒りっぽい独裁者が目を見開き、時には目を瞑るような光景に出会い、人を赦す事を学んでゆく。

愛する人や自分の人生を独裁者に奪われてしまった国民の怒りは「正義」なのか。
それはまた誰かにとっての「悪」となるのではないか。
しかし彼等の「正義」は盲目的で「正義=大統領を殺す事」という手段に使われてしまう。
この時、私達は今まで「悪」の立場であった独裁者と「正義」の国民という立場が一転し、「正義を振りかざす国民」と「ただの老ぼれと小さな孫」という構図になっていく事に気づく。

独裁者の懸賞金は100万円。
あなたが貧しい当国民であったなら、彼の首を取りますか?それとも踊らせますか?

そして、もし独裁者が死んだ時、残るものは本当の自由なのでしょうか?