放浪者がサーカス団に迷い込むまでの序盤に詰め込まれた数々のギャグが見事。
抱っこされた子供のパン、盗った盗られたのドタバタ劇、ブルース・リーの「燃えよドラゴン」を想起させる鏡の間、自動人形など、次々と笑いを巻き起こした後、ようやく舞台となるサーカスに辿り着く。
笑いのプロがサーカス団では素人となり、ショーを見て笑い、それを覚える姿が滑稽。
客は練習を重ねた芸より即興で笑い、放浪者は人気者になる。そこには恋、嫉妬、失恋、野心があり、身体を張った名人芸を披露した後、愛する人から身を引くほろ苦さを残す。
本作の製作中に初のトーキー映画がヒットし、ハリウッドがサイレントからトーキーへ移り変わる中、妻との離婚騒動、大道具の盗難事件、撮影所の火事など、悪夢のような状況が続いたという。
そんな中で演じたのが「悪夢」
ライオンの檻や綱渡りという命がけのギャグを特撮やスタントなしで演じきったチャップリンに脱帽。
ある時は雪山、またある時は戦場、彼の作品は悪夢の状況に身を置いて、そこに笑いを巻き起こす。その姿を観ていると悩みの1つや2つ笑い飛ばしてやろうかという気持ちになる。
なかなか飛んでいってくれないけどね…。