MasaichiYaguchi

ビューティー・インサイドのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ビューティー・インサイド(2015年製作の映画)
4.0
本作で描かれる、目覚めると外見が変わってしまう男との恋愛劇は、設定が奇想天外なゆえに一つ間違うと作品自体が破綻して茶番劇になってしまう。
そういうリスクを背負いながらも、登場人物たちの心の襞をなぞるような繊細なストーリーと透明感のある美しい映像、そしてキャストたちの温もりのある演技で何時の間にか不思議なラブファンタジーの世界に誘われる。
性別や年齢、人種も様々に“日替り”で変身する主人公ウジンを傍で見ている分には“喜劇”で楽しいが、カフカの「変身」の男のように「ある朝目覚めたら巨大な虫になっていた」よりは増しとはいえ、本人にとっては“悲劇”だ。
ましてや恋愛において第一印象が決め手だというのに、“日替り”で変身する相手に対して恋愛が成立するのかというのが本作のテーマのように思える。
悪い魔女に呪いをかけられた相手と遊び半分で付き合っているうちは良いが、真剣に愛するようになったら現実的にこの“呪縛”と向き合わなければならない。
この作品はファンタジーの設定を借りながら、愛の本質に迫ろうとしているように思う。
それはタイトルが意味する外見に囚われない内面の美しさ、その中に愛を見詰めることに表れている。
本作では、“日替り”のウジンを、ユ・ヨンソク、イ・ジヌク、イ・ドンウク、イ・ボムス、ソ・ガンジュン、パク・シネ、コ・アソンという韓国の人気俳優や女優が、そして上野樹里さんも出演して演じているという豪華さだけでなく、少女漫画の原作を映画化した邦画の恋愛物とは一線を画したオリジナリティー溢れる純愛ストーリーが繰り広げられている。
劇中で何度も奏でられる「アマポーラ」の甘い旋律がロマンチックなムードをより盛り立てていて心に残ります。